コンプレッサーの使い方・音色との相性は?

 ミックスをする際にEQとセットで登場する「コンプレッサー」ですが、なんとなく差し込んで満足する♪という使われ方が多いのではないでしょうか。

 こちらもEQと同様によく教則本に例が載っているのでそのままの値で使うというやり方もありますが、コンプを掛けるスタート地点は目の前にある音源なので、その音に対してどのような効果を得たいのか、目的を持って使用することが大切です。

そのためにはコンプの仕組みを知って音を聞き分けることがとても重要なポイントとなります。

 そこで今回は、何のためにコンプを使用するの? どのような音を作ることが出来るの? そして、目的とする音を作るために本当にいつも使っているプラグインで再現できるの? というところにポイントを絞ってコンプの仕組みを根本から学べる記事を書いていきたいと思います。

   

コンプを使う目的とは?

 コンプは主に次の2つの目的で使用されます。このあたりは多くの方がご存知かと思います。

音量のダイナミックレンジを狭くして音圧を上げるため。(音量の均一化)

 ボーカルや楽器など、演奏をしているとどうしても抑揚があるため、そのままでは音量が極端に大きい箇所、小さい箇所が出てきてしまいます。オーケストラなど抑揚を楽しむジャンルではむしろそこが良い所でもあるのですが、近年の音圧事情では抑揚を狭めて音圧を上げる使い方が用いられています。

アタック音や減衰音をコントロールしてリズム感を出すため。(音作り)

 リズム楽器などでは音のほんの少しの長さ次第でリズム感がでたり崩れたりしてしまいます。コンプは音をタイトにしたり、余韻を目立たせたり、アタックの高音・低音を強くしたり、ボーカルの発音(子音・母音)の強弱をコントロールしたりなどなど様々な音作りにも用いられます。

コンプの仕組みとは?

 それではどのような仕組みで目的の効果を生み出しているのでしょうか?

 次の図はコンプがかかり始めてから効果が切れるまでの時間の流れを示しています。

コンプ説明図

 今後の説明がわかりやすくなるように便宜上ここではコンプが作動している間はレシオの比率分だけ元の音量がスレッショルドの値に近づいていると考えてください。この図のイメージを持つと音がより作りやすくなると思います。

☆用語説明

 コンプに関する用語の説明です、一部は上の図と照らし合わせながらご覧ください。

スレッショルド(閾値)

 この値よりも大きな音が流れるとコンプが作動します。スレッショルドは可変のものと固定のものがあり、固定タイプでは入力値(Gain)を上げる事によってコンプを作動させます。

アタックタイム

 スレッショルドを上回る音を検知してから実際に圧縮が始まるまでの時間を決めます。最速ではのっぺりとした音に、遅くするごとに高音→低音の順にアタック感が追加されていきます。ただし遅くし過ぎるとまったくかからなくなります。リミッターでは最速の0msに設定されています。

リリースタイム

 音量がスレッショルドを下回ってからどのくらいの時間をかけてコンプを開放するかを決めます。コンプがかかっている間は音はスレッショルド値に近づくため、リリースタイムが長いと余韻が持ち上げられます。また、あまりにリリースタイムが長い場合次にスレッショルドを超える音が現れるまでにコンプが解除されず、次の音のアタック感が損なわれるという現象が起きるため注意が必要です。

Knee

 コンプのかかり具合が鋭く掛かるか、ゆるやかに掛かるかを設定します。値を大きくするとソフトニー設定になります。ハードでは高音がかつかつするようなサウンドに適し、ソフトニー設定では低音がドンドンとくる音作りに適しています。ソフトによっては固定されていて設定できません。

レシオ

 スレッショルドを超えた音を圧縮する割合を決める値です。例えばがっつりとアタック感(高音低音に限らず)を出したい場合レシオが小さいと殆ど差を感じないためあまり効果的でない一方、全体の音量バランスを整える用途ではあまり大きい値にすると抑揚がなくなっていまうので注意が必要です。

ゲインリダクション(db)

 元の音から何db圧縮されているかが表示されるメーター。10dbも振れていればかなりかかっています。

☆コンプがかかる流れ

① スレッショルドを超える音がコンプに流れるとコンプが反応します。

② スレッショルドを超えた音はアタックタイムを過ぎた時間から圧縮が始まります。

③ 圧縮された音はレシオが「1:2なら半分の音量」、「1:3なら3分の1の音量」まで圧縮されます。この時圧縮された量が「ゲインリダクション(db)」の値になります。

④ 元音がスレッショルドを下回ります。

⑤ リリースタイムまでの時間をかけて少しずつ音量がスレッショルドの値から元音に近づいていきます。

コンプの種類による得意な音とは?

 コンプを使ってどのような音が作れるのか先程書きました、では目的の音を作るためのコンプはどの種類でも良いのでしょうか?もしかすると、いつも使っている慣れているコンプでは目指している音にたどり付けない可能性があるのです。

 それではどのような種類があるのか、いくつか定番のものを集めてみたので相性の良い音とともに紹介していきましょう。

OPT 光学式(LA-2A、LA-3A)

 光学式には、有名なLA-2AとLA-3Aなどがあります。

光学式の特徴と相性の良い音

① 光学式はその名の通りLEDの光量によってコンプを制御する方式で、ぽわぁとしたやわらかいアバウトなかかり方をします。

② LA-2Aでは右のノブ「Peak Reduction」がスレッショルドの役割で、リダクションした分の音量を左のノブ「Output Gain」で補います、Peak Reductionが最小でもかかりすぎてしまう場合は元の音源の音量を下げてください。またこの機種ではアタックタイム、リリースタイム、Kneeが全て固定でとてもゆるやかにかかるのが特徴です。

③ LA-2Aでは回路に真空管を使用しているためチューブの温かみのある音が、一方後継機種のLA-3Aではトランジスタを使用しているためデジタルな音が出ます。

④ 3Aのほうがやや反応が早めで、コンプがかかっている感じが強いです。

◯ 相性の良い音

  • ボーカルやストリングスのダイナミックレンジ調整用途。
  • クラシックなどのジャンル。

☓ 不向きな音

  • アタック感を出したい、音をタイトにしたい用途などに向かない。
  • キックやベースなどリズム隊のグルーヴ作りなどに向かない。
  • テンポの早い曲のノリづくりには向かない。
WAVESの光学式真空管コンプレッサーCLA-2Aの使い方と相性の良い音など
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FET式(トランジスタ方式)

 FETタイプでは、お馴染みの1176(BlackとBlue stripe)などがあります。

FET式の特徴と相性の良い音

① トランジスタを使用しているのでとにかくレスポンスが早く切れのあるかかり方をします。

② 特徴のある潰れ方をするので音色が一気に変化します。

③ 1176ではアタックとリリースのノブが通常と逆なので注意。数値が大きいほど時間が短く、ともに右に回しきると最小値に設定されます。

④ スレッショルドが固定なのでInputでGainを持ち上げ、Outputで上がりすぎた分を落とす使い方をします。

◯ 相性の良い音

  • テンポの速い曲に勢いを付けたいとき、ガッツのある音に。
  • キックやスネア、ベースなどアタック感を足したい場合やタイトにしてグルーブを作りたいときなど。
  • ロックやメタル、ダンスミュージックやアイドルソングなどのジャンル。

☓ 不向きな音

  • 味付けのない自然のサウンドを活かしたい場合など。

WAVESの1176プラグイン「CLA-76」の使い方は次の記事で詳しく紹介しています。

WAVESコンプレッサーCLA-76の使い方と効果的な活用法
 WAVESのビンテージシリーズコンプレッサーCLA-76を初めて使う方にもわかりやすく、さらに使い慣れた方にもより効果的に使用する方法...

真空管タイプ

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 真空管タイプではFairChildのほかCLA-2Aにも真空管が使われています。

真空管タイプの特徴と相性の良い音

① 真空管の暖かいつぶれ方をします、やわらかくて溶けこむような音、FETと比べるとやや抜けが悪い音ですが高い音圧と勢いが付加されます。

② Thresholdを増やしたらリダクションした分をOutput Gainを増やして音量を戻します。

③ 「LEFT/RIGHT:左右別々な設定」、「LINKED:左右をリンク」、「LAT/VER:MSモード」があります。MSモードの際は上がMID、下がSIDEに割り当てられます。

◯ 相性の良い音

  • 比較的どんなジャンルにも相性良く合います。
  • アナログな感じで音割れせずに自然に音圧を上げたいとき。
  • チューブ感を足したいときなど、それがこのコンプのほぼ全てかと思います。

☓ 不向きな音

  • タイトな音を作りたい場合にはあまりおすすめしません。

 WAVESのFairchildプラグイン「PuigChild」の使い方は次の記事で詳しく紹介しています。

WavesのFairchildコンプレッサー PuigChildの使い方
 WavesのPuigChildはアナログ感を足す用途はもちろん、左右を分けてコンプを掛けたり、MS処理にも使える万能コンプレッサーです...

VCA回路タイプ

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 VCAタイプには有名なDBX 160などがあります。

VCAタイプの特徴と相性の良い音

① 効きが早くてとても鋭くかかる、潰しすぎるとローがなくなってくる。

◯ 相性の良い音

  • スネアなど比較的中高音を重視するリズム楽器のアタック感を出すなど。
  • ラテンパーカッションなど。

☓ 不向きな音

  • キックやベースなどは低音がでなくなるため他のコンプを使用したほうが良いかもしれません。

味付けのない万能タイプ

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 あらゆる設定を好みに変えられるC1コンプレッサーは味付けがなくて万能です。

C1の特徴と相性の良い音

① コンプとして機種の癖がなくて素直に音が変わってくれる。

② 細かい調整ができ、スレッショルドの値も目で見てわかりやすいので目的の音さえ決まればすぐに作れる。

◯ 相性の良い音

  • とにかくオールマイティ、どんな用途にでも使えます。

☓ 不向きな音

  • 機種固有の癖やビンテージ感を出したい場合は他のプラグインと併用しましょう。

人気のRenaissanceコンプ

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 もしかするとこればかり使っている人もいそうな人気コンプレッサーですね(?)

Rcompressorの特徴と相性の良い音

① 暖かくゆるやかなつぶれ方をします、よほど変な使い方をしないかぎり音が壊れないので安心して使えます。

② Kneeがかなりゆるめで固定されているのでカツっという音よりも図太い音作りが得意。

③ 設定項目も少なくわかりやすいのでとにかく使いやすいです。

◯ 相性の良い音

  • ボーカルやストリングスにゆるやかにかけてダイナミックレンジを整えるのに向いています。
  • 超低音と相性が良いです。
  • バラードなどゆったりめの曲と相性が良いです。

☓ 不向きな音

  • 音をタイトにしたり、アタック感を出したり、グルーヴを出したりする作業。
  • 細かいリズムを要求されるリズム楽器など。

一見難しそうなマルチバンドコンプ(C6)

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 見た目で使うのを躊躇しそうな多機能コンプですが実はとても便利です。

C6の特徴と相性の良い音

① 一見複雑そうに見えますが使い方はほぼEQと同じです、先ほど紹介したC1コンプレッサーが帯域ごとに配置されていて、分けてかけられるという実はすごく単純な構造です。違いはKneeを調整できる点。

② 皆さんがよく使うディエッサーもある帯域だけにコンプを掛けることができますが、こちらも同じイメージで使用できます。

③ 楽器単体に掛けることもでき、2mixにかけて仕上げを引き締めることにも活用できます。

④ C6ではRangeという項目がレシオになっています。

◯ 相性の良い音

  • C1同様どんな音にも対応できます。
  • 低音の編集で高音域も混じっているような音源。
  • 2mixにトータルでコンプをかける際など。

☓ 不向きな音

  • 割と単純な音の編集に使うには少し大掛かりになってしまいます。
  • 特に高音のアタックをコントロールしたい場合は、通常のコンプでも早いアタックタイムの段階で効果が得られるので敢えてマルチバンドを使う必要はあまりないです。

まとめ

 今回はコンプレッサーについて書いてみました、機種によってかなり性質が異なることを是非皆さん自身の環境で実際に使用して音との相性を試してみてくださいね。またここで紹介していない機種もたくさんありますので、どんどん使うことで用途別のお気に入り機種を見つけられるとよいと思います。