DTMをやっているとどうしてもやらなければならないのがボーカルのミックス作業です。
ところがこのボーカルミックスが苦手という方はかなり多いようで、「手順のマニュアルがないからわからない」、「どんなプラグインを使ったら良いの?」、「具体的に何をするの?」という質問をたくさん頂いているので、今回はそんなボーカルミックスの手順をわかりやすくマニュアル化してすることにしました。
ボーカルミックスって具体的に何をするの?
ボーカルミックスとは何をする作業なのか、その手順と目的を見ていきましょう。
ボーカルミックスの手順と目的
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ボーカルミックスの主な目的にはこんなものがあります。すべて知っていた方はもう既に素晴らしい知識をお持ちですね💡
テイクのコンピング
コンピングというと、伴奏を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、複数のテイクから良い箇所だけを選びながら1つのトラックを作る作業をテイクコンピングと呼びます。
コンピングはボーカルだけでなくギターやバイオリンなど楽器の収録でも応用できます。
一発録りはちょっと自信がないという方も、何回か録音をして、その中から良い箇所だけを選んでつなぎ合わせることでトラックのクオリティを上げることができます。
ウィスパーボイスのミックス
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ウィスパーは使う場合と使わない場合があります。
通常歌声ははっきりと発音したものを録音しますが、ウィスパーボイスというのは「ささやくように」息の音だけを出して発音します。
息を吐き出す時にすぅ〜っと風の音だけが出ますが、その音のみで歌詞を歌ったものを収録することがあります。
テンポの遅いバラードなどで、声が空気のように透き通っている曲を聴いたことがあると思いますが、あのような効果はこのウィスパーボイスを別撮りして重ねて作っています。
タイミング修正
テイクコンピングの段階で、既に機械を使わずに修正できている場合は必要ない作業です。
もし、コンピングで修正しきれていない箇所があったり、繋ぐ際にタイミングが不自然になってしまった箇所があればタイミングの修正を行います。
タイミング修正の方法については、以前はトラックを細かくカットして行う方法が主流でしたが、現在は伸び縮みさせて綺麗に修正する方法があるのでそちらを使うと綺麗にできます。

ピッチ修正
こちらも、数テイク録音していればほぼコンピングの段階で仕上がっていると思いますが、それでも修正しきれない場合はピッチ修正ソフトを使って修正をしていきます。
ピッチ修正はCubaseなどのDAWに付属のものを使用しても良いですが、より細かく仕上げるならメロダインやWaves Tuneというソフトがおすすめです。
◯ 入門用ならこちら
◯ 本格的に修正するならこちら
Waves Tuneの使い方はこちら▼

空間調整
ここからの順番はエンジニアさんによってもそれぞれ異なると思いますので、自由に行ってください。今回は空間調整から行う方法を紹介していきます。
まずは、楽器の演奏空間とボーカルの空間を違和感なく整えていく作業をします。この段階でボーカルの立ち位置(マイクからの距離)も決めておいて、ボーカルが複数いる場合はパンや奥行きも調整しておきます。
空間調整の方法についてはこちらの2記事を読んでおくと上達しますよ^-^ノ


EQ・ディエッサー・エンハンサーによる音作り
空間調整が終わったらEQによる音作りをしていきます。EQでの処理は大きく分けて次の2つになります。
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ハイカット&ローカット
まずは不要な低音域と高音域をカットして音をスッキリとさせましょう。どの程度カットするかはそれぞれの声によって異なるのでこの数値をカットすべきという絶対値は存在しません。
ここで重要なのは、必要な音までカットしないように気をつけるということです。
なぜカットするのかというと、その音があると悪影響を及ぼす場合なので、例えば
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などが考えられますが、ボーカルはメインなので2番目の要因については他の楽器ほど気にしなくても大丈夫です。例えば、曲中でどうしてもこの楽器だけは、という特別な楽器がある場合などはマスキングされないようにボーカルを削ることもあります。
不要な帯域のカット
こちらは音作りがメインになってきます。音声の中で耳障りな音、例えば歯擦音がキンキンする帯域や、こもっている箇所など、その曲の中で印象に合わない部分を削っていきます。
そのボーカル音声の、どの音域が不要なのかは曲調との相性によっても異なるため、例えばある曲ではハキハキとした子音を目立たせたミックスが良かったり、ある曲では母音が強く優しいイメージの方が合っていたり、またある曲では力強く、ある曲では弱々しく、その都度設定を変える必要があります。
コンプレッサーによるダイナミックレンジの調整
ボーカルが慣れている場合は収録時に曲に合うような表現力に富んだダイナミックレンジで歌ってくれるのでそのままでもかなり良い仕上がりになります。
ところがそうでない場合は、後にフェーダーで抑揚を付けるためにまず一度コンプレッサーで全体のダイナミックレンジを整えておく必要があります。
ちなみに、最近のEDMなどの音圧が高くて最終的にボーカルにほとんど抑揚がない曲の場合などは先にフェーダーでレンジを整えてからコンプレッサーをかけることがあります。そのあたりは曲調によっても順番を変えてください。
コンプレッサーの使い方や音色との相性についてはこちらをご覧ください。

コンプレッサーによる音色作り
続いてコンプレッサーで音を作っていきます。コンプレッサーを使ったボーカルの音色作りでは、大きく分けて次の3つを目的に行っていきます。
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セリフを聴きやすくする
ボーカルのセリフがよく聴き取れないことがあります。録り直しで解決できればよいのですが、声質によるものであればコンプレッサーで解決します。
この場合はセリフ始めの1音を狙って素早くかかるように設定にして、声の高音部分のアタック音を強調することで多少聴きやすくすることができます。
パワフルに聴こえるように
この場合は先程よりも少し遅めに設定して、声の低音部分が現れ始めた頃を狙ってコンプレッサーをかけます。
やさしく聴こえるように
この場合はあまりアタックが強くならないように設定をしていきます。リリースタイムを長くすることで語尾まで綺麗に伸びるような音声を作ることができます。
コンプレッサーを使った音作りについてはこちらの記事をご覧ください。

フェーダーによるダイナミックレンジの調整
ここまでのコンプの作業で、ボーカルトラックのダイナミックレンジはほぼ失われてしまっています。もちろん、EDMのような抑揚のほとんどない音圧の高い曲であれば問題ないのですが、バラードなどの抑揚を大事にしているジャンルでは少し表現力に欠けてしまいます。
最終的なバランス調整も含めて、Aメロからサビまでの音量変化や細かい表現をフェーダーで再構築してあげましょう。
ダイナミックレンジの調整は、DAWのフェーダーにオートメーションをかけて動かす方法や、Wavesから出ている有名なVocal Riderというプラグインを使用するのもおすすめです。
※DAWのフェーダーでオートメーションを描く場合には、プリフェーダー・ポストフェーダーの設定に注意しながら行いましょう。
空間系エフェクトによる音色作り
いよいよ最後の音色作りを行っていきましょう。プレートリバーブやディレイ、ダブラー・コーラスなどを使って最終的なイメージに近づけていきます。
ここまでの行程をしっかり作り込んでおけば、不要な音が混じることもなくすっきりと音作りに専念することができるはずです💡
プレートリバーブってなに?という方はこちらの記事をご覧ください。

まとめ
ボーカルミックスの手順と目的(おさらい)
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今回はボーカルミックスの目的や方法について、1つの例として紹介してみました。
手順についてはジャンルや得たい効果によっても前後するので、適宜やりやすいように変えて行ってみてください^-^ノ
ミックスで一番大事なことは1つの設定を使いまわすのではなく、その時々によって実際に耳で聴きながら、目的の効果が得られるように設定値を決めていくことです💡
今回紹介した方法やプラグインを使用して、設定による音の違いやそれをどのようにミックスに取り入れるかなどいろいろ試してみてくださいね^-^ノ♪