ストリングス(弦楽器)の奏法にはどんなものがある? DTMではどうやって表現したら良いの?

 クラシック音楽や映画音楽でオーケストラの演奏を聞いていると、弦楽器には多くの奏法が登場して、多彩な表現を担当していることに気が付きます。

 DTMのストリングス音源にもいろいろな奏法やアーティキュレーションが含まれていますが、どのように使い分ければ良いのでしょうか?

 今回はストリングスにはどのような奏法があるのか?DTMではどのような音源を使って表現すればよいのかを紹介します。

   

ストリングス奏法の種類は2つのグループに分けられる

 ストリングスの奏法は、大きく分けると弓による奏法指による奏法の2つのグループに分けることができます。

  • 弓による奏法
  • 指による奏

 ではそれぞれのグループについて見ていきましょう。

弓による奏法

 弓による奏法とは、弓の使い方を工夫することで表現できる奏法のことです。弓の奏法は弦楽器演奏の中でも最も基本となるのでしっかり押さえておきましょう。

 弓を使った奏法はたくさんありますが、中でも有名な奏法を紹介しておきます。

  • Bowing:ボウイング(上げ弓と下げ弓)
  • Slur:スラー(レガート)
  • Detache(デタシェ)
  • Staccato(スタッカート)
  • Spiccato(スピッカート)
  • Martele(マルテレ)
  • Bowed Tremolo(ボウド・トレモロ)
  • Sul Tasto(スル・タスト)
  • Sul Ponticello(スル・ポンティチェロ)
  • Col Legno(コル・レーニョ)

Bowing:ボウイング(上げ弓と下げ弓)

 弓による奏法の基礎として、下げ弓と上げ弓によるボウイングについて知っておきましょう。

 弦楽器は弓を引いたり押したりを繰り返して音を出す楽器です。弓を根元側に弾く動きを下げ弓先の方へ押す動きは上げ弓という名前が付いています。

 それぞれ、楽譜上に記譜する場合は次のような記号を使って表します。

 例えば、次の楽譜では1音ずつ下げ弓と上げ弓を交互に演奏するという意味になります。

  • 下げ弓:弓を根元側に弾く動き
  • 上げ弓:弓を先に向けて押す動き

一般的なボウイングの位置

 次はボウイングの位置についての基礎知識です。弦楽器を弓で鳴らす場合、ちょうど上の画像のように、指板とコマの中央付近に当てて音を出します。

 あとで特殊奏法を説明する際に登場するのでこの基本ポジションを覚えておいてください。

Slur:スラー(レガート)

 DTMの音源でレガートと書かれたパッチはこのスラーを表現するために用意されたものです。

 スラーは最初の音から最後の音までを1弓で滑らかに演奏することを表しています。弦楽器の場合、フレーズが長くて弓を返す場合でもできるだけ滑らかに繋ぎます。

  • 音をできるだけ滑らかに繋ぐ
  • 弦楽器の場合、長いフレーズの場合はうまく弓を返して滑らかに繋ぐ
  • DTMではレガート音源を使う

Detache(デタシェ)

 デタシェは、1音ずつ弓を返して音切り離して演奏する奏法です。このとき、弓は弦に付けたまま跳ねさせずに演奏します。

 各音の減衰は、ほとんど減衰せずに繋ぐものから減衰させて繋げるものまで表現できます。

 DTMでデタシェを表現したい場合はレガート音源を長く伸ばしたまま、エクスレッションやベロシティクロスフェードで音を切るように繋ぐと綺麗に減衰を表現できておすすめです。

  • 1音ずつ弓を返して切る
  • 弓が弦から跳ねていない音
  • DTMではレガート音源を使ってエクスプレッションで音を切るのがおすすめ

Staccato(スタッカート)

 スタッカートは音価(音の長さ)を1/2の長さに切って演奏することです。スタッカートでは弓を跳ねさせずに弦に付けたままで演奏するという点に注意してください。

 DTMではスタッカートという音源がありますが、音価が決まったものしかありませんので、レガート音源のノートの長さを変えて表現する方が本物の演奏に近くなります。

  • 音価を1/2の長さで演奏する奏法
  • 弓が跳ねてはいけない
  • DTMではスタッカート音源は使わずにレガート音源を短く切って使うのがおすすめ

Spiccato(スピッカート)

 記譜を見るとスタッカートと全く同じですが、スピッカートは跳弓という、弓を弦から跳ねさせるように演奏する奏法です。

 スピッカート独特の軽快さで曲を盛り上げたり、多くの曲で使われている奏法なので使い分けられるようにしておきましょう。

 独特の音色が求められるため、DTMではスピッカート専用の音源を使用します。

  • 記譜はスタッカートと同じ
  • 弓を跳ねさせるのが特徴
  • DTMではスピッカート専用の音源を使う

Martele(マルテレ)

 マルテレは、スタッカートを演奏する際に弓圧を瞬間的に加えて演奏する奏法で、より強いスタッカートが表現できます。

 マルテレでも弓は跳ねずに演奏します。

  • 弓圧を瞬間的に加えるスタッカート
  • 弓は跳ねない
  • DTMではベロシティを大きめにスタッカートを表現する

Bowed Tremolo(ボウド・トレモロ)

 トレモロには弓を使ったものと、指を使ったものがありますが、一般的にトレモロといえば弓を使ったトレモロのことを指します。

 トレモロは弓を小刻みに動かすことで音を細かく刻む奏法です。

 ちなみに音符には斜線が付いていますが、この斜線はその音をどのくらいの長さで刻むかを表しています。

トレモロは記譜の旗の本数+斜線の本数の音価で刻む

 例えば次の楽譜では旗のない2分音符をトレモロで刻んだ場合です。下の段には実際に刻む音価が表示してあります。

 

 今度は旗が1本の8分音符にトレモロ記号が付いています。8分音符を8分音符で刻んでも仕方ないので、今度は斜線の分だけ音価を足した音符でトレモロを刻みます。

 トレモロといえば2本の斜線のものが多いですが、こういった規則があるということも覚えておきましょう。

  • トレモロといえば弓を使ったボウド・トレモロのこと
  • トレモロ記号(斜線)の本数はどのくらいの音価で刻むかを表している
  • 斜線が多いほど早く刻む
  • DTMでは専用のトレモロ音源を使う

Sul Tasto(スル・タスト)

 最初の方で、ボウイングは指板と駒の中央付近で行うと紹介しましたが、スル・タストという奏法では弓の位置を指板側に寄せて演奏します。通常のポジションよりも柔らかくて弱い音が出せます。

  • 指板上でボウイングを行う奏法
  • 柔らかく弱い音が出る
  • トレモロと相性が良い
  • DTMでは専用の音源を使う他、EQでやわらかめに仕上げる方法がある

Sul Ponticello(スル・ポンティチェロ)

 スル・タストとは逆に、駒寄りの位置でボウイングを行う奏法をスル・ポンティチェロと呼びます。硬い金属的な暗い音色が出ます。

  • 駒の近くでボウイングを行う奏法
  • 暗くて硬い音が出る
  • トレモロと相性が良い
  • DTMでは専用の音源を使う他、EQで硬めに仕上げる方法がある

 Col Legno(コル・レーニョ)

 上の画像を見てください、びっくりしますよね!? なんと弓がひっくり返っています。コル・レーニョという奏法では、弓の木の部分を使って弦を叩いて音を出します。

 しかし、この奏法では弓が痛むために奏者があまりやりたくない奏法です。弦楽器は本体だけでなく弓の材質や振動によっても音色が変わってしまうので、弓を痛めるのは一大事です。

 高級な弓は柄の部分だけで数十万円ほどします。馬の毛は交換できますが、柄の部分は消耗品ではないので大事に扱いましょう。

  • 弓の柄の部分を使って弦を叩いて音を出す奏法
  • 弓が痛むのであまり多用しないほうが良い

指による奏法

 続いては指使いによって可能な奏法を紹介していきます。

  • Pizzicato(ピチカート)
  • Portamento(ポルタメント)
  • Glissando(グリッサンド)
  • Trill(トリル)
  • Harmonics:ハーモニクス(自然・人工)
  • ビブラート

ピチカート

 ピチカートは弦を指で弾いて演奏する奏法で、楽譜上では「pizz.」と書かれた音符から「arco」の手前までをピチカートで演奏します。

 ちなみに、弾いた弦を指板へ叩きつけてパチっという音をだすピチカートを「バルトーク・ピチカート」といって、記譜する場合は音符上に丸いマークを付けることになっています。

バルトークピチカート

  • 弦を指で弾く奏法
  • Pizz.と書かれた音符からピチカートを始める
  • arcoと書かれた音符からボウイングに戻る
  • 弦を指板に叩きつけるバルトークピチカートという奏法がある
  • DTMでは専用のピチカート音源を使う

ポルタメント

 ポルタメントは2つの音の間を指を滑らせながら滑らかに繋ぐ奏法です。ポルタメントには音階の区切りがなく滑り台のように上がっていくという意味が含まれています。

 ポルタメントは、着地点の音がメインになる場合に使う表記で、始点から着地点に向かってどのように表現して到達するかを重視しながら演奏します。

  • 2つの音を段階無く滑らかに繋ぐ奏法
  • 着地点の音がとても重要で、他の音は着地点にどのように向かうかを表現する
  • DTMでは音源のポルタメント機能を使う

グリッサンド

 グリッサンドとは、通常は12音階を階段状に滑らせながら繋いでいくことを意味していて、管楽器やピアノなどではその意味でよく使われる言葉です(その為記号も階段状に波線になっています)。

 弦楽器では構造上、段階なく滑らせることができるので、始点と着地点を滑らかに繋ぎます。

 ポルタメントでは到達点の音が重要でしたが、グリッサンドでは始点から到達点まで全ての音を重要な、まとまりとして扱う必要があります。

  • 2つの音を階段状に繋ぐ奏法、ただし弦の場合は階段がないので滑らかに繋ぐ。
  • 始点から到達点まですべてを一つのまとまりとして扱う
  • 速度は一定か、またはハープのグリッサンドのように多少揺らしてもよい
  • DTMではグリッサンド機能、またはポルタメント機能を使う

Trill(トリル)

 トリルは基準となる音(親音符)二度上の音交互に鳴らす奏法です。高い音は短二度の場合と長二度の場合があります。

 DTMでは専用の音源を使う他、鍵盤を使って交互に弾いても表現できる。

  • 2つの音を交互に高速に鳴らす奏法
  • 基本は親音符から始めて親音符で終わる
  • 稀に二度上の音符から始める場合は装飾音符として前打音を書いておく
  • DTMでは専用の音源や、レガート音源を交互に弾いてもOK

Harmonics:ハーモニクス(自然・人工)

 今まで紹介してきた奏法はどれも押さえた弦の音(基音)を鳴らす奏法でしたが、ハーモニクスは倍音を鳴らす奏法です。

 ハーモニクスには開放弦を使って出す自然ハーモニクスと、押弦した音程からハーモニクスを作る人工ハーモニクスの2種類があります。

 どちらのハーモニクスも、弦を軽く触れることで倍音を生み出して演奏します。

 ハーモニクス奏法の記譜は音符上に丸を書いて表します。

 DTMではハーモニクス専用の音源が用意されているので利用しましょう。

  • ハーモニクスとは倍音のことで、押さえた弦よりも高い音が出せる
  • 最近の劇伴では怪しい雰囲気を醸し出す常套手段で用いられる
  • DTMではハーモニクス専用の音源を使う

ビブラート

 弦楽器をただ弓で鳴らしただけではまっすぐな音しか鳴りません。そこで、奏者は音が単調にならないように指で音を震わせることでビブラートを掛け、表現の幅を広げています。

 オーケストラでは、古典的な音楽ではあまりビブラートが使われていませんでしたが、ロマン派以降は集団の弦でもビブラートを普通に使うようになりました。

 DTMの音源ではビブラートありの音源とノンビブラートの音源が用意されているので、それらをクロスフェードさせて比率を変えることでビブラートの量を調整することができます。

 また、音源によってはcc1(モジュレーションホイール)にビブラート量を割り当ててコントロールできるものもあります。

 特にソロ弦の場合ビブラートを使いこなせるかどうかで演奏のクオリティがかなり変わってくるので実際の楽器でもDTMでも是非練習しましょう。

  • ビブラートは表現力を左右する重要な要素
  • 古典派の管弦楽曲ではあまりビブラートはかけない
  • ソロ弦演奏ではビブラートは必須、掛けっぱなしでも味気なくなるのでバランスが大事
  • DTMではビブラートありとなしの音源をクロスフェードで繋いで表現する
  • モジュレーションで調節できる音源もある

番外編:和音奏法 & divisi(ディヴィジ)

 弦楽器には、複数の弦を同時に演奏する和音奏法や、オーケストラで奏者を半分に分けて演奏するdivisiなどがあります。

ダブル・ストップ

 隣り合った2つの弦を同時に弾いて、2和音を演奏する奏法です。

トリプル・ストップ

 隣り合った3本の弦を同時に弾いて3和音を演奏する奏法です。

クワドプル・ストップ

 4本の弦を同時に弾いて4和音を演奏する方法です。

divisi(ディビジ)

 例えば16人の1stバイオリンを、8人ずつの2つのグループに分けることで声部を増やすことができます。そのように分割することをdivisiと呼びます。

 DTMではLASSのようなストリングス音源を使うことできれいに表現することができます。

まとめ

 弦楽器の奏法は他にもまだまだあるのですが、今回は基礎的な奏法を紹介しました。

 これだけでも全てを理解してアウトプットしていくのは大変なことですが、少しずつ覚えていけば自然と使いどころや表現方法がわかってきます。

 多彩な弦楽器の表現方法を身に付けて演奏や作曲、DTMを華やかにしてみてくださいね^-^ノ

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