皆さんは作詞をする時にどの部分から書き始めますか?
きっと「出だし」からだよっていう方が多いのではないでしょうか?私も振り返ってみると、出だしから書くことが多いです。
以前、ある有名な作詞家さんが「出だし」を思いつけば出来たも同然」と云っていたとの記事を読んだことがありますし、「出だし」でその作詞の言いたいことや世界観がわかるように書いたほうがいいと教えてもらったこともあります。
つまり、「出だし」ってそれだけ大切だってことですよね?!
そこで、今回は作詞をする時の「出だし」について、どうしたら効果的なのか? ルールはあるのか? また、「出だし」が思いつかない時にやってみて欲しい裏技! そして「出だし」がその作詞全体に与える影響について書いてみようと思います。
歌詞の出だしにはパターンがあって使い分けると効果的!
今現在、曲の構成としては「Aメロ」「Bメロ」「サビ」で創るのが一般的です。ここで云う「出だし」はAメロの頭ということになります。
ところで、歌詞の出だしにはいくつのパターンがあることをご存知ですか?作詞をする際にはそんなパターンをうまく使い分けることで、聞き手一番に伝えたいものを上手に伝えることができます。
まずは、実際に歌詞で使われている出だしにはどのような種類があるのか見てみましょう。
作詞の出だしには「情景」や「状況」、「物語の概要」、「会話」などがある
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作詞の出だしで1番多いのが「情景」で、他には「状況」、その作品の「概要」、まれに「会話」から始めることもあります。
実際にそれぞれの作詞例を作ったので比べてみましょう。
情景を伝える出だしの例
情景の | 急に降りだす午後の雨 置き傘1つに二つの肩 |
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(聞き手の感想):あ、雨が降ってふたりで一つの傘に入っているのを主人公が見ているんだね。それでふっと過去を思い出した歌なんだな・・・。
情景の 出だし例2 | 遠くに聴こえる ゆるい波の音 |
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(聞き手の感想):海外・・インドネシアのリゾート地でまったりしている主人公が思い浮かびます。何が始まるんだろう?ちょっと大人な落ち着いた感じ?
状況を伝える出だしの例
状況の 出だし例1 | とうに忘れた ぬくもりが こんな夜には 顔を出す |
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(聞き手の感想) どんな夜なんだろう?寂しいのかな?雨降りなのかな?こんな風に興味を呼びますよね?!
その作品の概要やメッセージを示す例
作品の概要 出だし例1 | どんな昨日も明日につながるよ |
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作品の概要 出だし例2 | 誰かは誰かの いつだって宝物 |
これらは応援系の作詞に多く、作品の中で伝えたいことを出だしでいきなり言い切ってしまうことでストレートに伝える方法です。
会話から入る出だしの例
会話の 出だし例1 | 「いつも笑ってるけど本当は辛いんじゃない?」 |
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子供の頃、作文を書く時に会話から書き始めると「おっ、出来るな!」みたいに言われた記憶があります。それを作詞に応用してもいいかもですね!?
作詞の出だしにはルールはなく自由に作ってOK!
作詞の出だしには正確なルールは特になく、何をどう書いても自由だし大丈夫ですが、多くの作品を眺めていると「出だし」には情景をもってくることが1番多いようです。
オーソドックスなら情景からスタート、少しチャレンジしてみたいなと思ったら他のパターンも取り入れてつつ作詞を進めていきましょう。
歌詞の出だしを思いつかないときに試したい方法とは?
歌詞を出だしから作ろうと思っても、なかなか思いつかないということがあるかもしれません。そんなときにおすすめな方法があるのでいくつか紹介していきます。
出だしを思いつかない時は他の部分から書き始めてもOK!
出だしがどうしても思いつかないときは、サビなど曲の他の部分から書き始めてみましょう。
曲(曲先)を聴いていると、どこかしら印象的な部分、このメロディ好きだなってところがあったり、言葉が入りやすいところがあったり、気持ちを伝えやすいところがあったりしますが、そのどこから書き始めても構わないのです。
ジグソーパズルを完成させる時のように、どこからピースを置いても最終的に完成すればOKです。
外に出て普段と違う景色を眺めたり、映画やTVでアイディアを取り込む!
普段と違う街に行ってみたり、違うものをみてみたりすると、ふっと歌詞の出だしに合う景色やフレーズ等を思いつくことがあります。
また、ふと耳に入った誰かの言葉に触発されることもあったり、一歩外に出ればそこはアイディアの宝庫だったりするので気がついたことをメモを取ってアイディアノート(スマホでもOK)を仕上げていくのも楽しいですね。
曲や文字数に関係なく、情景を設定して思い浮かぶ単語やフレーズを山ほど書いてみる!
例えば、情景を「夏の海」に設定して、思い浮かぶ単語を書き出してみましょう。
単語が思い浮かんだら、夏の海から連想されるフレーズを考えてみましょう。
そして、これらの単語やフレーズをうまく組み合わせていきます。曲を聴きながら言葉数を整えていきましょう。
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するとこのような歌詞ができあがりました。もっともっと細かく情景を設定したり、言葉やフレーズをたくさんリストアップしておくと、より創りやすいですね。
コレとコレを組み合わせてみよう・・とかそうそう、この言葉ならこのメロディにピッタリになりそう・・とか目で(紙面やPCの画面で)見て繋ぎ合わせることもできます。
出だしで作詞の印象はどのように変わる?
それでは実際に同じ季節という設定で、作詞の出だし部分が異なるだけでどのくらい印象が変わるのか見てみましょう。
出だし例1 | 凍えた煉瓦の舗道 舞い降りる雪片(かけら)達 |
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出だし例2 | ウズウズしてる太陽 夏を待ちかねてる |
出だし例3 | 言われのない不条理に 苛まれ続けてる |
例1は冬の情景が広がってきますし、凍えたで始まるのできっと哀しい、または切ないんだなってわかりますよね。一方で例2ではもう夏休みを太陽も待ってるのかな~ってくらいに楽しい気分になります。例3だと人生について歌うのかな?と思う真面目な感じですよね。
このように同じ世界、同じ季節でも視点や主役を変えるだけでこんなにも印象が変わります。今この瞬間に楽しい人も、悲しい人も、一生懸命何かに取り組んでいる人もいるように、主役の数だけ世界観、印象の種類も存在しています。
作詞をするときは、その中の誰を主役にするのか、誰の気持ちをメインに世界観を構築するのかや、言葉遣いを考えることがとても大切で、それによって印象も180度変わるのです。
そして、そんな楽しさや切なさ、哀しさなど、その作詞の設定を最初に目にする出だし部分は歌詞の中でも最初の印象を決定づけるとても大切な場所なのです。
出だし部分の作り方や効果的な使い方 のまとめ
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以前、知り合いの作曲家さんが「このは曲はサビだけ耳に残ってもらえばいいんだ」と言っていた曲がありました。さすがにサビはすごく印象的なメロディでした。そんな曲の何気ない「出だし」こそ作詞家の頑張りどころです。
その作曲家さん一押しのサビを引き立たせる「出だし」を考えたいじゃないですか?!だって「出だし」でつまらないって思ったらサビまで聴かないかも知れないし。
作曲家さんがサビだけって言っていたのに、出だしのフレーズいいよね~って言われたら作詞家冥利に尽きますよね!!
そんなこんなで「出だし」はとても大切です。今は作曲家さんもアーティストさんも作詞をされるので、なかなか作詞家にコンペも依頼も来ない時代です。
でも、だからこそ、数少ないチャンスはゲットしたいですよね?!
この記事が少しでもそんな皆さんのお役に立てたら嬉しいです。こうして書いてみて、改めて「出だし」について考えるいい機会になりました。
私もゲット出来るよう、頑張らなくっちゃ!