音楽や映像・映画製作で最終的な音量はどのくらいがベスト!?様々な現場のラウドネス基準とこれからのサウンドデザインに必要な知識とは!?

 音楽や映像を製作する際、その目的に合わせて最終的にどのくらいの音量で仕上げるかを決めることはとても重要なことです💡

 かつて、音圧(=聴感上の音量)が高いほうが迫力があるとして音圧競争時代がありましたが、それも今では効果は薄れつつあります。

 最近はCDよりもオンライン配信の音楽を聴くユーザーが増えつつありますが、実は配信サービスでは「ラウドネスノーマライゼーション」という機能によって、どの曲を聴いても音量が一定になるように自動的に調整されているのをご存知ですか?

 どのみち音を小さくされるなら、最初からその目的に合った音量でより音の情報が損なわれない音声を作るべきなのです💡

 ということで、今回は様々な場面で使われている音楽&音声はどのくらいの音量で流されるのか?そして目的に合った音量で音声を仕上げるためのラウドネスメーター(LUFS/LKFS)について紹介していきます^-^ノ

 音楽を作る音楽家の方にも、映像を作る方にも役立つ内容を紹介します💡

ラウドネス(LUFS/LKFS)とは?

 ラウドネスとは、人が周波数帯域によって感じる音量の差を考慮した音量のことで今ある全ての指標の中でも最も人の聴覚に近い音量を示す値です💡

 番組、映画、音楽などのコンテンツごとの音量差を無くし、視聴者に負担を掛けない音作りを目指すために設置され、LUFS(LKFSも同じ)で表されます。

 1kHzのサイン派を測定した時、1 (dB) = 1 (LUFS/LKFS)となります。

ラウドネスは平均値という点に注意!

 例えば2時間の映画があれば、ラウドネスはその2時間の間に再生されたすべての音量の平均値として算出されるため、ラウドネス値を測るには、音声の最初から最後までを計測しなければなりません💡

 そして、ずっと音の小さな場面が続いて、数秒間だけ爆音が鳴ったとしても全体のラウドネスは低くなってしまうのです。

 そのため、音声を製作する場合にはTrue Peak(ピーク)の値も参考に全体のバランスを調整していきます。(各バランスについては後ほど紹介💡)

様々な目的別のラウドネスレベル一覧!

 音量を統一しようというラウドネスですが、一体どこで活用されているのでしょうか?

 様々なところで活用されているラウドネス値や、実際に流通している音楽のラウドネス値を知って音声製作に活用してみましょう💡

 実際に公開する際にはこの表に当てはまるように製作を進めれば最も良い条件で視聴者に届けることができます💡

 ラウドネスレベル(LUFS/LKFS)
日本のテレビ・デジタル放送基準
(ARIB TR-B32)

-24.0±1(LUFS/LKFS)

WEB用コンテンツ -16 ~ -12(LUFS/LKFS)
映画(劇場公開用フィルム)-20 ~ -31(LUFS/LKFS)程度
(-27くらいの作品が多い)(規定はない)
劇場上映用トレーラー
(予告編)の上限音量規制値

・TASA:85 Leq(m)  (約-16 LUFS)以下
(幕間CM)

・SAWA:82 Leq(m) (約-20 LUFS)以下
(シネアド規格)

Youtube -13(LUFS/LKFS)
(規定を超えた音量は下げられる)
Spotify-14(LUFS/LKFS)
(規定を超えた音量は下げられる)
Apple SoundCheck-16(LUFS/LKFS)
(規定を超えた音量は下げられる)
CD非常に音圧の高い曲
(アイドルソングやEDMなど)
-7 ≦(LUFS/LKFS)
近年の日本のポピュラーソング-10±2(LUFS/LKFS)
アメリカのポピュラーソング-14±4(LUFS/LKFS)
クラシックやジャズなどの曲-30 ~ -15(LUFS/LKFS)

すべての映像・音声が「聴感上同じくらいの音量」で聞こえる時代へ!?

 テレビのデジタル放送化に伴って、日本でも2012年からラウドネスの基準が設けられ、現在では-24±1(LUFS/LKFS)という音量の範囲に収まるように映像を作ることになっています💡

 これには、番組やCMが変わって、突然、大きな音が流れると視聴者が驚いてしまったり、聴覚過敏の方が不快な思いをしないためという理由があるのです。

 これを機に、同じ端末で再生する音声はできるだけ聴感上同じくらいの音量で聴けるように、このラウドネスの基準は様々なところで活用され始めてきています💡

音圧競争時代、音圧が高いと呼ばれた音楽は-6(LUFS/LKFS)もある!

 市販されているCDの中で、音圧の高いEDMやアイドルソングなどの音量を測定すると、なんと-6(LUFS/LKFS)以上もあります💡

 これはもちろん、最終的にCDというメディアを使用して再生したときに最大限の効果を発揮できるように作られたものだということを頭の片隅において置かなければなりません💡

テレビドラマ用の劇伴(BGM)などは音圧を高くしても後に下げて使用することになる

 日本のテレビで放送できる音量の基準は-24(LUFS/LKFS)なので、先程のCD向けに一生懸命音圧を上げたBGMをドラマで使用することになると、この基準に収まるようにボリュームを下げて調整されてしまいます。

 ドラマでは、この他にもダイアログ(セリフ)SE(効果音)なども入るので、音楽は更に下がることが予想できますね💡

 ドラマ用のBGMを作成するなら、音質が損なわれない程度に、後で下げることを考えてドラマ用に適した2mixを作り直すのがベストです。

劇場公開用フィルム(映画)のラウドネスはどのくらいがベスト? シネアドには音量の上限82Leq(m)が設定されている!

 映画館へ上映開始時刻よりも前に入ると幕間CMが流れていますよね💡

 そして、上映時間になると電気が消え、またCMが流れ、その後続いて本編へ入りますが、この上映開始後のCMを特にシネアドと呼びます。

 映画本編には音量の上限も下限もありませんが、このシネアドには82Leq(m)(約-20 LUFS/LKFS)以下の音量で製作するよう規定が設けられているのです。

シネアドと本編は繋がっていて、シネアドが大きいと本編の音量が下がって迫力がなくなってしまうという問題!

 映画館では再生音量は常に一定、というわけではなく、上映する音声の大きさによって上映時の再生音量を決定しています。

 シネアドと本編フィルムは一本化されていて、再生音量はより大きな方へ合わせられるため、もし本編よりもシネアドの音量が大きい場合、再生音量を下げられたときに本編の迫力が損なわれてしまうという問題があり、シネアドは82Leq(m)以下で作らなければならないという規定ができました(LEQ(m)値はWAVESのWLM PLUSプラグインで測定できます)。

本編を仕上げる際には82Leq(m)を参考にしながら音量を調節するのがベスト!?

 一般的に、CMは音楽やダイアログが常に鳴っているものが多く、ラウドネスレベルも高くなりがちです。

 一方で映画には様々な映画があり、静かな場面が多く抑揚のある映画と、アクション映画のように激しい場面が多い映画とでは仕上げるべきラウドネスレベルも変わってきますが、一般的に静かな部分の多い映画は全体的なラウドネスレベルは低くなります。

 そこで、実際に映画の最終ラウドネスレベルを決める際には、82Leq(m)を基準に、製作する映画がどのくらい静かな映画か、激しい映画かを考え、そこから最適なラウドネスレベルを導き出すことが劇場で綺麗に上映するための秘訣と言えます💡

実際に82Leq(m)のトレーラーと本編を直結してみて最もよく聞こえるように音量を調節するのが無難!?

 最終的な判断に迷ったら、82Leq(m)というシネアドの上限であるトレーラー(予告動画)を用意し、その後に本編をくっつけて再生した際に音が小さすぎないかを確認します。

 ここで、音が小さい場合にはもう少しラウドネスレベルを上げるという判断ができます。

音が大きすぎてもだめ?本編の始まり方を工夫することが大事!?

 劇場公開用フィルムの音量に上限はありませんが、トレーラーの後でいきなり本編に音量差があると視聴者に負担が掛かります。

 それでも全体的にラウドネスレベルを上げて迫力のある映画に仕上げたければ、これは音楽製作でも用いられますが、本編の始まりの音量をやや下げ、徐々に上げていくという手法がよく使われます。

 ただし、劇中であまりに音量差があると視聴者は疲れたり、耳鳴りを起こすこともあり、また聴覚過敏の方も安心して劇を見れるよう考えて作らなければなりません。

ダイアログ・BGM・SEの音量バランスはどのように決める?

 ここまで紹介してきたラウドネスとは、最終的に仕上がる作品の音量のことでしたね💡

 最終的な音量を整えることはもちろん大事なことですが、音声の「ダイアログ」「BGM」「SE」の音量バランスもまた重要です💡

  それぞれのバランスは次のように整えていくとスッキリと聴きやすい音声に仕上がります。

 ダイアログピークメーターで 「-10dBを平均」に-20 ~ -6dBの間に収まるように調整。
 BGMピークメーターで 「-20dBを平均」に -30 ~ -15dBの範囲で調整。
(ダイアログのピークより20dB小さいくらいを目指す!)
 SEダイアログとほぼ同じか、少し大きな箇所もある。
 全体設定 この設定であればおよそ82Leq(m)(およそ- 20 LUFS/LKFS)になるので、ここから目的に合わせて最終的なラウドネス値に揃える。

 音量はあくまで相対的な値なので、これよりも小さな音量でミックスを行っても構いません💡

ダイアログとBGMのピーク平均の差は約20dB

 ダイアログとBGMのバランスは様々な処理や場面によっても変わりますが、一般的に両者をそのまま合わせる場合は、約20dBの差で合わせましょう💡

 このバランスで合わせれば、ダイアログがBGMによって聞こえなくなる!という心配がなくなります💡

(ダイアログ、BGMそれぞれに加工する場合は、この限りではありません)

音楽や映像・映画製作で最終的な音量はどのくらいがベスト!?様々な現場のラウドネス基準とこれからのサウンドデザインに必要な知識とは!? のまとめ!

  • 音声のラウドネスレベルは公開時の目的に合わせて仕上げるのがベスト!
  • 劇場上映ようフィルムの音量はトレーラーの最大音量82Leq(m)から相対的に聴かせたい音量で決める!
  • Youtubeなどのオンライン配信ではラウドネスが一定になるように、規定値を決め、規定値をオーバーしているものは自動的に音量が下げられる !
  • ラウドネスはLUFS(=LKFS)という単位で表される!
  • ラウドネスは全体の平均値!
  • 音声のダイアログ、BGM、SEはVUメーターやピークメーターを使用してバランスを整える!

 動画配信サイト大手のYoutubeでもラウドネスを一定に保つシステムが導入され、今ではデジタル放送だけでなく、個人で投稿する作品でもラウドネスレベルを見直す時期が来ています💡

 より大きな音圧を得るために不必要に圧縮をするのではなく、これからは最終的な目的に合わせた音声づくりを始めてみてはいかがでしょう^-^ノ