ミックスをする際にEQとセットで登場する「コンプレッサー」ですが、実はなんとなく差し込んで満足している、という方も多いのではないでしょうか?
コンプレッサーもEQと同様によく教則本に例が載っているのでそのままの値で使うというやり方もありますが、コンプを掛けるスタート地点は目の前にある音源なので、その音に対してどのような効果を得たいのか、目的を持って使用することが大切ですが、そのためにはコンプの仕組みを知って音を聞き分けることがとても重要なポイントとなります💡
そこで今回は、何のためにコンプを使用するの? どのような音を作ることができるの? そして、目的とする音を作るために本当にいつも使っているプラグインで再現できるの?の3つにポイントを絞ってコンプの仕組みを根本から学べる記事を書いていきたいと思います^-^ノ
コンプレッサーを使う目的とは?
コンプレッサーは主に次の2つの目的で使用されます💡まずは、何のためにコンプレッサーを使用するのかについて知っておきましょう💡
音量のダイナミックレンジを狭くして音圧を上げるため。(音量の均一化)
ボーカルや楽器など、演奏をしているとどうしても抑揚があるため、そのままでは音量が極端に大きい箇所、小さい箇所が出てきてしまいます。
オーケストラなど抑揚を楽しむジャンルではむしろそこが良い所でもあるのですが、商業用の音源では、コンプレッサーを使用してある程度ダイナミックレンジを整え、聴きやすく仕上げることが求められています💡
アタック音や減衰音をコントロールしてリズム感を出すため。(音作り)
リズム楽器などでは音のほんの少しの長さ次第でリズム感がでたり崩れたりしてしまいます。
コンプレッサーは、音をタイトにしたり、余韻を目立たせたり、アタックの高音・低音を強くしたり、ボーカルの発音(子音・母音)の強弱をコントロールしたり、様々な音作りのために使用されています💡
コンプの仕組みとは?
それではどのような仕組みで目的の効果を生み出しているのでしょうか? 上の図はコンプがかかり始めてから効果が切れるまでの時間の流れを示しています💡
ここからはコンプに関する用語の説明を行います、一部は上の図と照らし合わせながらご覧ください💡
スレッショルド(閾値)
この値よりも大きな音が流れるとコンプが作動して圧縮が開始されます。スレッショルドは可変のものと固定のものがあり、固定タイプでは入力値(Gain)を上げる事によってコンプを作動させます。
アタックタイム
スレッショルドを上回る音を検知してから実際に圧縮が始まるまでの時間を決めます。
最速ではのっぺりとした音に、遅くするごとに高音→低音の順にアタック感が追加されていきますが、遅くし過ぎると必要な音にコンプレッサーがかからなくなるため程よい設定値を見つける必要があります。
リミッターでは最速の0msに設定されています。
リリースタイム
音量がスレッショルドを下回ってからどのくらいの時間をかけてコンプを開放するかを決めます。
コンプがかかっている間は音は圧縮され続けるため、リリースタイムが長いと抑揚を保って自然に掛けることができますが、あまりにリリースタイムが長い場合次にスレッショルドを超える音が現れるまでにコンプが解除されず、次の音のアタック感が損なわれるという現象が起きる(抑揚が損なわれる)ため、設定には工夫が必要です。
Knee
スレッショルドを堺にコンプのかかり具合が鋭く掛かるか、ゆるやかに掛かるかを設定します。値を大きくするとソフトニー設定になります。
ハードkneeでは高音がかつかつするようなサウンドに適し、ソフトknee設定では低音がドンドンとくる音作りに適しています。
機種によってはkneeが固定されていて設定できません。
レシオ
スレッショルドを超えた音を圧縮する割合を決める値です。
例えばがっつりとアタック感(高音低音に限らず)を出したい場合レシオが小さいと殆ど差を感じないためあまり効果的でない一方、全体の音量バランスを整える用途ではあまり大きい値にすると抑揚がなくなっていまうので注意が必要です。
ゲインリダクション(db)
元の音から何db圧縮されているかが表示されるメーター。10dbも振れていればかなりかかっています。
☆コンプがかかる流れ
コンプの種類による得意な音とは?
コンプを使ってどのような音が作れるのか先程書きましたが、目的の音を作るためのコンプはどの種類でも良いのでしょうか?
もしかすると、いつも使っている慣れているコンプでは目指している音にたどり付けない可能性があるのです💡
それではどのような種類があるのか?それぞれの機種と相性の良い音はどのような音なのか?、いくつか定番のものを集めてみたので相性の良い音とともに紹介していきましょう💡
OPT 光学式(LA-2A、LA-3A)
相性の良い音 | 相性の悪い音 |
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光学式はその名の通りLEDの光量によってコンプを制御する方式で、ぽわぁとしたやわらかいアバウトなかかり方をするのが特徴です💡
光学式のコンプレッサーには、有名なLA-2AとLA-3Aなどがあります。
LA-2Aの特徴!
LA-2Aでは右のノブ「Peak Reduction」がスレッショルドの役割で、リダクションした分の音量を左のノブ「Output Gain」で補います、Peak Reductionが最小でもかかりすぎてしまう場合は元の音源の音量を下げてください💡
LA-2Aでは回路の増幅部に真空管を使用しているためチューブの温かみのある音が特徴的で、またこの機種ではアタックタイム、リリースタイム、Kneeが全て固定されていて、とてもゆるやかで自然にかかるのが特徴です。
LA-3Aの特徴!
LA-3AはLA-2Aの後継機種で、増幅部にトランジスタを使用しているため、LA-2Aに比べて反応が速くデジタルな音が出ます。
基本的な設定方法はLA-2Aと同様に行えます💡
CLA-2Aの使い方はこちら!
FET式(トランジスタ方式)
相性の良い音 | 相性の悪い音 |
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FETタイプのコンプレッサーといえば、トランジスタを使用しているのでとにかくレスポンスが早く切れのあるかかり方をするのが特徴です💡
FETタイプには、お馴染みの1176(BlackとBlue stripe)コンプレッサーなどがあります。
1176コンプレッサーの特徴!
FET式のコンプレッサーは、切れ味がよく特徴のある潰れ方をするので、使用すると音色が一気に変化します。
パンチのある音色作りに特化している一方で自然に掛けることは苦手💡
1176ではアタックとリリースのノブ表記が通常と逆なので注意!数値が大きいほど時間が短く、ともに右に回しきると最小値に設定されます。
また、スレッショルドが固定なのでInputでGainを持ち上げ、Outputで上がりすぎた分を落とす使い方をするという
WAVESの1176プラグイン「CLA-76」の使い方はこちら!
真空管タイプ
相性の良い音 | 相性の悪い音 |
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真空管タイプのコンプレッサーを使用すると、真空管独特の暖かいつぶれ方をします。
やわらかくて溶けこむような音づくりが得意で、FETと比べるとやや抜けが悪い音ですが高い音圧と勢いを付加するのも得意💡
真空管タイプではFairChildが有名です。
FairChildの特徴!
FairChildでは、まずThresholdを下げ、リダクションした分をOutput Gainを増やして音量を戻す使い方をします。
それぞれの設定項目には、「LEFT/RIGHT:左右別々な設定」、「LINKED:左右をリンク」、「LAT/VER:MSモード」があり、MSモードの際は上がMID、下がSIDEに割り当てられます。
WAVESのFairchildプラグイン「PuigChild」の使い方はこちら!
VCA回路タイプ
相性の良い音 | 相性の悪い音 |
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VSAタイプのコンプレッサーといえば、マスター、バストラックに使用して全体をまとめるバスコンプとして使用するのに適しています💡
効きが早くてとても鋭くかかる一方で、潰しすぎるとローがなくなってくるので注意が必要です💡
VCAタイプには有名なDBX 160、API-2500、SSL Busコンプレッサーなどがあります。
味付けのない万能な「デジタル」タイプ
相性の良い音 | 相性の悪い音 |
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現代のデジタルコンプレッサーの強みは、なんといっても機種の癖がなくて素直に音が変わってくれること💡
細かい調整ができ、スレッショルドの値も目で見てわかりやすいので目的の音さえ決まればすぐに作れるところも使いやすいポイントです💡
あらゆる設定を好みに変えられるC1コンプレッサーはWAVESコンプレッサーの中でも味付けがなくて万能💡
人気のRenaissanceコンプ
相性の良い音 | 相性の悪い音 |
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Rcompは、ビンテージのシミュレートを取り入れたソフトKneeのコンプレッサーで、暖かくゆるやかなつぶれ方をするため、ボーカルやストリングスのダイナミックレンジを整える用途で大活躍します💡
音作りに関しては、Kneeがかなりゆるめで固定されているのでカツっという音よりも図太い音作りが得意。
また、よほど変な使い方をしないかぎり音が壊れないので初心者でも比較的安心して使えるコンプレッサーでもありますね💡設定項目も少なくわかりやすいのでとにかく使いやすいです。
もしかするとこればかり使っている人もいそうな人気コンプレッサーかもしれません。
一見難しそうなマルチバンドコンプ(C6)
相性の良い音 | 相性の悪い音 |
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マルチバンドコンプレッサーというと一見複雑そうに見えますが、実は使い方はほぼEQと同じ💡
皆さんがよく使うディエッサーもある帯域だけにコンプを掛けることができますが、マルチバンドコンプレッサーは、ディエッサーが帯域ごとに配置されていて分けてかけられるイメージを持てば、すごく単純な構造です(違いはKneeを調整できる点)💡
見た目で使うのを躊躇しそうな多機能コンプですが実はとても便利です。
マルチバンドコンプレッサーは、楽器単体に掛けることもでき、2mixにかけて仕上げを引き締めることにも活用できます。
C6ではRangeという項目がレシオになっています。
コンプレッサーの使い方!種類によって音色との相性があるって知ってた? のまとめ!
今回はコンプレッサーの種類と、特徴、それぞれに得意な編集と苦手な編集について書いてみました💡
機種によってかなり性質が異なることを是非皆さん自身の環境で実際に使用して音との相性を試してみてくださいね💡
またここで紹介していない機種もたくさんありますので、どんどん使うことで用途別のお気に入り機種を見つけられるとよりスムーズに編集が捗ると思います^-^ノ