今回はWavesから出ている人気のボーカル編集プラグイン「Vocal Rider」の効果的な使い方について紹介していきます。
ボーカル編集といえば昔はミキシングコンソールのフェーダー操作によってフェーダーコンプ(手コンプ)を掛けたり、抑揚をつけたりしていましたが、近年はDTMによるソフト上での編集がメインになってきました。
しかし、CubaseなどのDAWではインサートプラグインはフェーダーの前にインサートするプリフェーダーと、フェーダーの後にインサートするポストフェーダーがあって、それぞれに使用できるエフェクトの個数が限られています。(後で説明)
そのためDAW付属のフェーダーで音量のオートメーションを描くとなると常にプラグインをプリフェーダーで使用しているか、ポストフェーダーで使用しているかを気にしなければならないため使い勝手があまりよくありません。
今回紹介するVocal Riderはインサートプラグインとしてフェーダーのオートメーションを書けるので、プラグインの順番を入れ替えるだけでプリポストフェーダーの入替えも簡単にできる素晴らしいプラグインです。
そんなプラグインをさらに効果的に活用する使い方を早速見ていきましょう^-^ノ
※使い方については中盤から書いています、使い方を早く知りたいという方はそこまで飛んで読み進めてください。
- Vocal Riderとは
- インサートのプリフェーダーとポストフェーダーってなに?
- Vocal Riderでのプリポストフェーダー
- Vocal Riderの使い方-ここから
- サイドチェインの使い方
- ターゲットコントロール
- Spill(取りこぼし量)の設定
- Vocal 感度の設定
- Vocal アクティブディスプレイ
- アタック時間の設定
- 音楽の感度を設定
- 音楽の感度を表示するLED
- Range(フェーダー幅)の設定
- Idle Arrow(ニュートラルポジション)
- Effective Range(音量に影響を与える幅)
- Rider Fader(メインフェーダー)
- オートメーションモード
- アウトプット
- Vocal Riderの使いどころ
- まとめ-音のつぶしすぎに注意
Vocal Riderとは
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フェーダーで音量のオートメーションを書ける
Vocal Riderは、DAW付属のフェーダーの代わりに、プラグインに搭載されたフェーダーを使って音量のオートメーションを書けるプラグインです。
再生しながらリアルタイムに入力できる
ボーカルを再生しながらこのフェーダーを動かすことで、フェーダーの動きをDAWに記録することができます。
iConから出ているモーターフェーダーなどの製品を使ってリンクすると、実機のコンソールと同じようにスムーズにフェーダー操作を行うことができるのも魅力的です。
Cubaseではクイックコントロールからリンクさせることができます。
Autoモードを使えば自動的に一定の音量範囲に整えてくれる
なんと、Autoモードを使えばVocal Riderが自動でボーカルの音量を一定の範囲内に整えてくれます。
Autoモードでオートメーションを書いた後に微調整できる
Autoモードを使って一定の音量に整えた後で、オートメーションを書き込んで微調整することもできます。
プリポストフェーダーが簡単に入替えられる
Vocal Riderはインサートプラグインとして使用するので、Vocal Riderの前にコンプレッサーを掛けるのか、それとも後ろで掛けるのなど、プラグインの順番を入れ替えるだけで簡単にできてしまいます。
フェーダーオートメーションの前にコンプを掛けるのか、後で掛けるのかによっても効果が変わってしまうので大事なポイントです。
サイドチェインを使って最適な音量に合わせてくれる
サイドチェインというのは、他のトラックの波形を参考にしながらエフェクトの掛かり具合がコントロールされる機能のことです。
Vocal Riderでは参考トラックの波形をサイドチェインで入力することで、ボーカルの音量を参考トラックの音量に適切に合わせられます。
インサートのプリフェーダーとポストフェーダーってなに?
上の図はCubaseのインサートラックです。全部で8つまでプラグインを使えるようになっています。
ところが、この8つ全てが同じかというと実はそうではなくて、上から6つ目まではプリフェーダー、下の2つはポストフェーダーとして音源に作用します。
Vocal Riderを使う上でこの2つの概念はとても重要なのでさらっと紹介しておきます💡
プリフェーダーとは
プリフェーダーとは、インサートしたエフェクトがDAW付属フェーダーの前で掛かることをいいます。
ポストフェーダーとは
ポストフェーダーとは、DAW付属のフェーダーで音量調節された後にインサートエフェクトがかかる状態です。
2つを上手く使い分けることがポイント
コンプレッサーで整えたボーカルに抑揚を付けたいという目的であれば、プリフェーダーの状態で、フェーダーを使って抑揚を付けます。
一方で、フェーダーで音を整えてからさらにコンプエッサーで圧縮したいという目的であればポストフェーダーとして使用する必要があります。
Vocal Riderでのプリポストフェーダー
上の図は「Vocal Rider」と「C1コンプレッサー」を使ってプリフェーダーとポストフェーダーを切り替えた例です。プラグインの順番を入れ替えるだけでできるので便利ですね。
Vocal Riderの使い方-ここから
ここからはVocal Riderの使い方について紹介していきます。
使い方について知りたい!という方はこの項から読み進めてください。
サイドチェインの使い方
Vocal Riderの開発者は、Vocal Riderをボーカルに使用する際はサイドチェインを使うことを推奨しています。
Vocal Rider側でサイドチェインをONにする
まずVocal Rider側でサイドチェインをONにしましょう。Cubaseの場合はサイドチェインボタンを押してオレンジに点灯させます。
BUSからVocal Riderにセンド機能を使って送る
まず、ミックスする音源を全てまとめたBUSトラックを用意します。そしてそのトラックのセンド機能を使ってVocal Riderへ音を送ってあげましょう。
まとめるのが面倒な場合は、伴奏のみを2mixへ書き出してVocal Riderへ送ってもOKです。
一覧に先程ONにしたVocal Riderが表示されているので選択します。
これでサイドチェインの設定が完了しました。
ターゲットコントロール
ターゲットコントロールは音量のオフセットを決めるボリュームで、フェーダーが0の時の音量を決めるために使用します。
ここで決めた音量を基準に、大きいか小さいかをフェーダーで調節していきます。
Spill(取りこぼし量)の設定
Vocal Riderには2種類あって、無印のものとLIVEと書かれたものがあります。LIVE版は主にライブ歌唱に使用することを目的に作られていて、このSpill機能はLIVE版のみに搭載されています。(ちなみにプラグインレイテンシはどちらも0です)
Spillは周囲の不要なノイズを検出しないようにする機能です。ここのノブを回すことによって、どれだけノイズを取りこぼすか設定し、ボーカルの音声だけをうまく区別するようにしましょう。
Vocal 感度の設定
Vocal Sensitivityでは、ノイズとボーカルを区別し、ボーカルの始まり部分と終わり部分を検出する感度を決める項目です。
Vocal アクティブディスプレイ
ボーカルの音声が流れている時は「Ride」が緑色に点灯します。音声が検出されていないときは「Idle」と黄色が点灯します。
アタック時間の設定
ボーカルが音声を発したことをVocal Riderが検出してフェーダーが動いて目的の音量に達するまでの時間を設定します。Fastは早く、Slowでは遅くなります。
音楽の感度を設定
サイドチェインを使用している場合、Vocal Riderへ送る音の変化がどの程度ボーカルの音量へ影響を与えるか設定します。右へ回すほど伴奏の音量に合わせてくれます。
音楽の感度を表示するLED
こちらもサイドチェインで送っている場合のみ使用する項目です。サイドチェインで送られてきた音の音量によって、LED濃い緑色や薄い緑色に変化します。
Range(フェーダー幅)の設定
Vocal Riderのフェーダーの可動域を限定したい場合は、赤枠部分にある2つの小さなつまみで範囲を指定してあげます。
範囲を狭めると元のダイナミックレンジを保ちつつ微調整でき、範囲を広げるとダイナミックレンジはどんどん損なわれていきます。
Idle Arrow(ニュートラルポジション)
Idle Arrowは先程紹介した左側のツマミ「Range」に挟まれた丁度真ん中の位置で、ボーカル音声が入力されていない時に停止する、ニュートラルポジションとなる位置です。
よく見るとオレンジ色の線が引いてあるのが見えます。
Effective Range(音量に影響を与える幅)
Rangeのつまみに挟まれた範囲が何dBあるか表示されています。画像では±12dB、元のボーカルのダイナミックレンジが損なわれることを意味しています。
Rider Fader(メインフェーダー)
Rider Faderと呼ばれるこの大きなフェーダーがボーカルの音量コントロールに使用するメインメーダーです。
MIDI入力機器を使用して動かしたり、トラックボールなどを使って動かすこともできます。
オートメーションモード
オートメーションを書き込んだり、読み込んだりする際にはオートメーションモードを使用します。デフォルトではOFFになっています。
オートメーションを書き込む場合
Vocal Riderの自動レベラー機能を使ってオートメーションを書き込む場合は真ん中赤色の「WRITE」をクリックしておきましょう。
その状態で再生させるとフェーダーの動きに合わせて自動的に書き込まれていきます。
自動で書き込まれたオートメーションは後でマウスで調整することもできます。
オートメーションを読み込む場合
書き込んだオートメーションを読み込む場合は一番右側「READ」をクリックしましょう。微調整をした後にWRITEモードで再生してしまうとまた全て上書きされてしまうので注意です。
アウトプット
抑揚の調整が終わった後に、やはり少しだけボーカルの音量を下げたい&上げたいという場合にはアウトプットレベルで均一に音量を変えられます。
Vocal Riderの使いどころ
それではこのVocal Riderをどう活用していくと良いのでしょうか?
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この3つが主な使い方になります。皆さんの制作現場でも十分効果を発揮してくれる力強い味方になること間違いなしです。
まとめ-音のつぶしすぎに注意
Vocal Riderはとても簡単に、しかも自動で音を作り込んでくれるのでデモ作りやコンペで時間のない作曲家さんにとって大活躍してくれるプラグインです。
便利なだけについ掛けすぎてしまうのはコンプと同じです^-^;程々に抑えつつ、むしろコンプの音作りでつぶれてしまった抑揚をVocal Riderで取り戻してあげたり、表現豊かになるような使い方も是非試してみてくだださいね^-^ノ♪
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