音程には長2度や完全5度などの、長音程や短音程、完全音程がありますが、たまに減5度や増4度などの、減音程、増音程と呼ばれる音程を目にすることがあります。
今回は、そんな増音程と減音程とは何か、どのように生じるのかについて書いていきます。
音程の種類
まずは、音程にはどのような種類があるのか確認しておきましょう。音程の種類は全部で7種類あります。
音程の種類7つ 完全 ・ 重減 ・ 減 ・ 短 ・ 長 ・ 増 ・ 重増 |
まずはこの7つの音程名を覚えてしまいましょう。
音程の度数
音程名の詳しい説明に入る前に、音程の度数について理解しておきましょう。
ある音を基準として、もう一つの音がある音階上でどれだけ離れているのか表す数字を度数といいます。
度数は同じ高さの場合を1度として数え、音程の差が広がるごとに2度、3度と数字が増えていきます。
全音と半音
鍵盤を例に、音がどれだけ離れているかを全音と半音に分けて考えてみましょう。
全音 = 半音 + 半音
の関係になっていることがわかります。
全音と半音の違い
次の項目からは、音程の中にこの全音と半音がそれぞれいくつ含まれているかを考慮しながら説明をしていきます。
長短系と完全系
先程の7つのうち、基本となる音程は「完全音程」と「長音程 & 短音程」です。まずはこの2グループを覚えておきましょう。
長短系 | 2度、3度、6度、7度 |
---|---|
完全系 | 1度、4度、5度、8度 |
長音程
長音程には長2度、長3度、長6度、長7度があります、それぞれの例を見ていきましょう。
長2度
ある音を基準として、もう一つの音が全音1つ分離れている音程を長2度といいます。
長3度
ある基準音から、もう一つの音が全音2つ分離れている音程を長3度といいます。
長6度
ある基準音から、もう一つの音が全音4つと半音1つ分離れている音程を長6度といいます。
全4半1(ゼンヨンハンイチ) = 長6度
長7度
ある基準音から、もう一つの音が全音5つと半音1つ分離れている音程を長7度といいます。
全5半1(ゼンゴハンイチ) = 長7度
短音程
短音程には短2度、短3度、短6度、短7度があります、それぞれの例を見ていきましょう。
短2度
ある音を基準として、もう一つの音が半音1つ分離れている音程を短2度といいます。
短3度
ある基準音から、もう一つの音が全音1つと半音1つ分離れている音程を短3度といいます。
短6度
ある基準音から、もう一つの音が全音3つと半音2つ分離れている音程を短6度といいます。
全3半2(ゼンサンハンニ) = 短6度
短7度
ある基準音から、もう一つの音が全音4つと半音2つ分離れている音程を短7度といいます。
全4半2(ゼンヨンハンニ) = 短7度
完全系
完全系は、完全1度、完全4度、完全5度、完全8度の4つがあります。なかでも完全4度は転回すると完全5度に、完全5度を転回すると完全4度になるので覚えておきましょう。
完全1度 & 完全8度
完全1度は同じ音程のもの、完全8度はオクターブのことをいいます。
完全4度
ある基準音からもう一つの音が全音2つと半音1つ分離れている音程を完全4度といいます。
完全5度
ある基準音からもう一つの音が全音3つと半音1つ分離れている音程を完全5度といいます。
増音程と減音程
音階上では、増音程と減音程がそれぞれ4度と5度で生じるので、完全4度、完全5度と混同しないように気をつけましょう。
増4度
※ 4度音程では次のような、全音3つを含む増4度が生じます。
減5度
※ 5度音程では次のような、全音2つと半音2つを含む減5度が生じます。
長短・完全・増・減を見分ける方法
長短系に登場する全音と半音の数をまとめると次のようになります。全音の数で色分けをしてあります。まず全音の数を数えて、その後に半音を数えて見分けましょう。
登場する全音・半音の数
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長短系・完全系から増音程と減音程が生じる場合
つぎは、長短系や完全系にシャープやフラットが付いて、増音程、減音程が生じる場合についてみていきましょう。
音域が半音増減する際に変わる呼び名は、完全系と長短系で異なるのでそれぞれ見ていきます。
完全系
完全1度、完全4度、完全5度、完全8度に共通する完全系での呼び方の変化です。
←♭が付くと #が付くと→ 重減 - 減 - 完全 - 増 - 重増 |
例えば完全5度にシャープやフラットが付いて音程が半音広がる場合、増5度になります。さらに半音広がれば重増5度となります。
逆に完全5度から音域が半音狭まる場合は、減5度、更に狭まると重減5度になります。
完全5度の音程が半音広がって増5度になる例
長短系
長短系ではこの変化が少し変わります。
←♭が付くと #が付くと→ 重減 – 減 – 短 – 長 – 重増 |
例えば次の譜面は長3度から一つフラットが付いて音域が半音狭くなっていますが、長3度から半音狭くなったものは短3度と呼ばれます。
短三度からさらに音域が半音狭くなると減3度になります。
同じ音程なのになぜ呼び方が違うのか?
ここまで見てきっとみなさんは思うはずです、「なぜ同じ音程なのに呼び方が違うのか」と。
例えば、よく増音程で跳躍するのはよくないと言われていますが、増4度も減5度も音程は同じはずですよね?ではなぜ区別されているのでしょうか(?)
実はこの音程の呼び方は調ありきでの考え方で、例えば人はハ長調ではドを基準とした音階を理解しようとし、音楽を聴く際は無意識のうちに調を意識しながら聴いています。
そして、いきなりこの音階から外れた音を演奏する際には、それが元の音からどのように変化して生じたものなのかを説明する必要があり、それを表すのが音程の名称なのです。
つまり、本来は音階を構成する完全5度の音に跳躍したいけれども、半音狭まるので減5度が生じたり、4度に跳躍する予定が半音広がるので増4度と呼び名が付くのですね。
減5度 増4度
同じ音程でも、想定する音域よりも幅があると、歌や楽器でも音をだすのに負担がかかりますが、想定した音よりも狭い音域だと音が出しやすいということから、増音程は難しいけれど、減音程は使っても良いという由来です。
そういった理由で、同じ音程なのに違う名称が使われています。
転回音程について
完全音程の項目でも少し触れましたが、2つの音のうち片方が1オクターブ上がったり下がったり、転回をした場合、転回後の2つの音程は変化してしまいます。
たとえば上の譜例では、長3度だったのが転回をして短6度になっています。
転回前と転回後では、決まった法則によって音程が入れ替わるので、この法則を覚えておきましょう。
転回後の変化(度数)
転回後の度数の変化は次のようになります。
1度 → 8度 2度 → 7度 3度 → 6度 4度 → 5度 |
転回後の変化(音程関係)
転回後の音程関係は次のように変化します。
完全 → 完全 長 → 短 増 → 減 重増 → 重減 |
まとめ
今までも和声法の記事で増音程が登場していたのですが、それがどういうものか説明をする場がなかったので、ここで改めて記事を用意しました。
この音程の話を理解することで和声の勉強がより一層楽しく理解しやすくなれば良いなと思います^-^ノ