バロックは17世紀から18世紀中頃(1600~1750年)の間、150年間に渡って続いた時代で、イタリアを中心に始まりを迎えます。
バロックとは「歪んだ真珠」の意味で、ルネサンスの美とは対象的な意味合いを持っていますが、バロックにも独自の美が認められるようになります。
バロックといえば対位法を巧みに使うバッハが有名なので、どうしても対位法や宗教音楽のイメージが定着しがちですが、実はバロックからは既に和声的な音楽が主流になっています。
今回はそんな複雑なバロックの音楽について紹介していきます^-^ノ
バロックとは
今までは複数の声部全てが主役だったポリフォニーの時代でしたが、ルネサンス後期からは1つの主役の声部を他の和音が支える和声の時代へ進んでいきます。
特にバロックでは一つの通奏低音を主役に和音と飾りを付ける通奏低音スタイルと、協奏曲が繁栄していきます。
バロック期は貴族の権力が強くなり宮殿が多く建てられる時代でもあります。貴族は毎日のように宮殿で祭典を開くので、祭典のための音楽作りが盛んになります。オペラはそんな祭典音楽の頂点として誕生しました。
また、劇を彩る音楽の表現力が上がってくるのもバロック音楽の特徴で、様々な心情を音楽でドラマチックに表現されるようになってきます。
バロック期は今となっては有名なバッハ(独)が登場する時代でもありますが、当時バッハはバロックの一般的な音楽の進化とは少し異なったスタイルで作曲をしていましたので、このページでもバッハについては少し別ルートの進化を遂げたものとして扱っていきます。
バロックのできごと
時代 | 出来事や時代背景 |
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17世紀 ~ 18世紀 |
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バロック期に活躍した有名な音楽家
有名な音楽家 |
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貴族の時代とドイツプロテスタント教会の入り交じる時代
バロック音楽が作られる一番の目的は貴族への献上品です。一方、遅れているドイツではこの時代、プロテスタント教会での聖歌づくりが盛んになってきたところで、今日では有名はバッハも教会のための音楽を作る一人でした。
バロックの音楽では、貴族のためのオペラのような表現豊かな芸術音楽と、もはや時代おくれになってしまった対位法的手法を使ったバッハの狭いジャンルの2つの軸を考える必要があります。
調性やリズムが確立
バロックになるとメロディの調性(短調・長調)やはっきりとした強拍・弱拍のリズム、ハーモニーが完成し、ようやく音楽の3大要素が揃い、音楽史の最初の時代として幕が開けることになります。
また、和声法のトニックに始まりトニックに終わるという流れもこの時代に確立しました。
オペラの誕生
バロックといえばオペラ、という程この時代とオペラは切り離せない関係にあります。
オペラはルネサンスからバロックに移行する時代に誕生し、バロックを通して音楽をドラマとして表現するという習慣が根付いていきます。
特にオペラでは歌詞をいかに聞かせるかが重要なので、これまでのような複数声部が皆主役で絡み合う音楽では歌詞がよく聞き取れません。
そこでバロックでは1つのメインになる声部を他の目立たない楽器が伴奏でサポートするようになってきます。
有名な初期バロックのオペラにはモンテヴェルディによるオルフェオ(1607年)があります。
オペラとは
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カンタータ
カンタータは、オペラから演技をとった演奏のみの声楽曲のことです。当時とても幅広い意味でカンタータというジャンルが使われていました。
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オラトリオ(聖譚曲)
オラトリオも物語を表現する音楽ですが、キリスト教の物語を題材にした独唱・重唱・合唱・管弦楽の劇音楽という点と、演技がないという点がオペラと異なります。
オラトリオもバロックを通して多く作られるようになり、今日でも有名なヘンデル「メサイア」のハレルヤなどがオラトリオの代表作です。
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受難曲
受難曲はオラトリオの一種で、中でもキリストの磔を物語の主題としたジャンルです。
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トリオ・ソナタ
トリオソナタは器楽曲で、2種類の旋律楽器と1種類の通奏低音(合わせて3つ)の楽器によって3声部に構成された曲で、バロックの通奏低音スタイル繁栄と共に人気がありました。
通奏低音の声部には主にハープシコードやオルガン、チェロがよく使われました。
ちなみに「ソナタ」と名がついていますがソナタ形式で書かれているわけではなく、もちろん古典派以降のソナタでもなく、この時代のソナタは「器楽曲」という意味で使われていました。
バッハの対旋律
有名なバッハはバロックの時代1685年~1750年の間に活躍しました。
この頃のドイツプロテスタント圏では、ようやく教会が力を持ちはじめて教会音楽が盛んになってきます。
ドイツプロテスタント教会では音楽教師が日々カンタータを作り続け、それを生徒が歌うという習慣がありましたが、バッハもそんな音楽教師のうちの一人でした。
バッハも宮廷音楽風の作品は残しているものの、彼の作品のほとんどはキリスト教に向けたものでした。
バッハの作品は、西洋音楽史で見れば既に古い手法になりつつあった対位法を使うものが多かったので、当時和声が急成長中だったバロックの文化では彼の作品はあまり評価されませんでした。
バロック時代の音楽家の成功といえば、イタリアで有名になり、宮廷のための音楽を作り、オペラ作曲家として活動することでしたが、当時のバッハはそのどれとも無縁でした。
バッハの作品が現在のように評価されるのは19世紀(ロマン派)になってからのことです。
クラシック時代の幕開け
皆さんがよくご存知のクラシック音楽の時代は、このバロック期の後期からはじまります。これまでの長い古楽の時代と変わって、クラシック時代に入ると音楽は更に急成長をはじめます。
バロック期に誕生した楽器
バロック期で誕生したり、活躍した楽器には次のようなものがあります。バロック期になると各楽器の形はほぼ完成されてきます。
ハープシコード(チェンバロ)
有名なハープシコードはこのバロック期に誕生し華形の楽器として演奏されていました。
ピアノフォルテ
現在のピアノの起源となるピアノフォルテはハープシコードの進化系としてこのバロック期に作られました。
バイオリン・ヴィオラ・チェロ
ストラディバリが活躍したバロックには既に完成された形のバイオリン(ヴァイオリン属)の楽器が誕生しています。
バロック・フルート
フルートといえば最近は金属でできているものが主流ですが、バロック期にはフルートといえば木管でできている木管楽器でした。
バロック・オーボエ
バロック期には、現在よりも構造が単純なオーボエの起源が誕生しています。
バロック・ファゴット
ルネサンス時代のランケットはバロック後期になると現代のファゴットに似た形まで進化してきます。
バロック・クラリネット
バロック期には、シャリュモーというリード楽器を改造したクラリネットの原型が誕生しています。
バロックのまとめ – 古典派へ
バロックといえば物語を表現する音楽、特に宮廷貴族のために音楽が作られる時代でした。
この時代から既に対位法という手法は古風なものとして扱われ、和声的に音楽を組み立てることの重要性が認識されています。
バロックの後期からは既に古楽を抜け出し、クラシック音楽の時代へ歴史が受け継がれていきます。
次回はいよいよクラシック音楽を嗜んでいる方に親しみのある古典派の音楽に入りますよ^-^ノ
古典派の西洋音楽史↓