和声法の第2転回形はちょっと変わりもの

 和声法の第2転回形はこれまでの和声とは異なり、和声機能が曖昧です。使用方法も限られるので、出現パターンを覚えしまいましょう。

第2転回形とは

 3和音の第5音がバスに配置されている和音のことを第2転回形呼びます。

第2転回形の要点

    • 第2転回形では3和音の第5音がバスに配置されている。
    • 表記は「I2」など、右上に小さい「2」を書いて表示する。
  • 第2転回形は、単体でトニックやドミナントなどの機能を持っていない。
  • 和音機能を持ってないので、他の和音を前後に結合して2つで1つの機能として用いる。
  • バスと根音が完全4度で不協和音程になっていて解決が必要で進行には制限がある。
  • 刺繍音、経過和音として経過的に使われることが多い。 

第2転回形の重ね方、つなぎ方について

 第2転回形は少し特殊なので、重ね方(配置)と連結する際は次のポイントに気をつけましょう。

第2転回形の配置と連結のポイント

  • 上3声には根音、第3音、第5音をすべて含める。
  • 第2転回形の配置は密集配置または開離配置のみオクターブ配置は不可。
  • 第2転回形の前後はできる限り保留し、順次進行する。(経過的に使いましょう)
  • ソプラノが旋律として跳躍進行することはできる。

Iの第2転回形の機能

 Iの第2転回形の前後に他の和音が連結されたときにどのような機能になるか見てみましょう。

Iの第2転回形と前後の和音の関係

  • I2はVと結びついてドミナントになる。(C→B)の動きは倚音(※)。(I-V)
  • I2→Vは完全終止として曲の終わり使われることが多い。
  • II1→I2は連続5度が生じやすいため、IIの第5音の声部を根音の声部よりも下に配置して4度音程にしておく。(例:Dmの第5音のラと根音のレ)
  • I2はIVと結びついてサブドミナントになる。(I2-IV)、(I2-IV1)、(IV-I2-IV1

倚音とは

 連続する2つのコードを[C][B]とするとき、Bの和音構成音の上隣または下隣に隣接する音が[C]に含まれていて、[B]の和音の最初の音として使われるとき、その音のことを倚音といいます。

IVの第2転回形の機能

 続いて、IVの第2転回形について見ていきます。

IVの第2転回形と前後の和音の関係

  • IVIと結合してトニックの働きになる。(IV2-I)
  • IVは、Iの基本形に挟まれて使われることが多い。(I-IV2-I)

Vの第2転回形の機能

 Vの第2転回形について見ていきましょう。

Vの第2転回形と前後の和音の関係

  • VIと結合してトニックの働きになる。
  • トニックとして使う例:(V2-I)、(V2-I1)、(I-V2-I1)、(I1-V2-I)

経過的な使い方(刺繍和音、経過和音)の例

 ①、②、③は刺繍和音④、⑤は経過和音の例。いずれも第2転回形を挟んだ流れの中で使用している。

刺繍和音と経過和音

まとめ

 第2転回形と第1転回形では配置の方法や使い方が大きく異なるので、曲中に用いる際にはどのような働きをするか、どのような目的で使うのかを明確にして配置しましょう。

 和声法での次回は属7の和音について掲載していきますが、和声法続きでみなさん飽きてしまうと思うので違うネタでも挟んでみようと思います。

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