ピッチ修正ソフトと言えば、皆さんよくご存知のAuto TuneやMelodyne、そして最近はCubaseなどのDAWに付属のピッチ修正ソフトもありますが、実はWAVESから発売されているWAVES Tuneというピッチ修正ソフトがとても優秀だということはあまり知られていません。
Auto Tuneは機能は多いが故に少し編集したいときにとても面倒だったり、Melodyneに関しては見やすくて編集もしやすいのですが、通すだけで音音が変わってしまう癖があったりして使いにくいことがあります。
そんな中でもこのWAVES Tuneは機能が少ないとはいえ、普通にピッチ修正するだけであれば十分な機能が備わっていて、しかも作りが単純で少し修正するにはものすごく使いやすいソフトです。
それでいて他のソフトに比べてものすごく自然にピッチ修正ができて、音色変化も一切ないという素晴らしいソフトで、なぜ日本では人気が出ないのでしょうか!?
そんなわけで、まだあまり日本語の情報も少ないので、このWAVES Tuneを日本で広めるべく、使い方をまとめてみましたよ^-^ノ
WAVES Tuneとは
WAVES Tuneは、数々の優秀なプラグインを販売しているあのWAVES社が密かに作り出したピッチ修正ソフトで、ボーカルのピッチ修正はもちろん、楽器のピッチ修正やタイミング修正までこなせる素晴らしいソフトです。
しかも単体で購入してもかなり安く買えることと、LT版であればなんとGOLDバンドルにも含まれているので購入のハードルも高くないところも良いポイントです。
画面が少し小さいのが難点ですが、それさえ慣れてしまえばピッチ修正のクオリティはかなり高いので、今からでも導入する価値は十分にあります。(操作が簡単ですぐに導入できます)
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グローバル補正セクション
グローバル補正は、WAVES Tuneで一番初めに設定する項目で、4つのパラメーターを設定できます。
Reference pitch
リファレンスピッチでは、基準となる(A=440Hz)の周波数を決めます。デフォルトでは440Hzになっていますが、用途に合わせて442Hzなど変更できます。
Global Pitch Shift
グローバルピッチシフトでは、半音を12段階に分けて基準の周波数を微調整できます。
Formant Correction
Formant Correction(フォルマント補正)では、ピッチ修正の際にフォルマント補正も行うか、行わないかを設定できます。
フォルマントの補正は、ボーカルのピッチ修正をする際に不自然にならないように使われる機能です。
「Corrected(デフォルト)」ではフォルマントの補正がON、「Non Corrected」に設定するとフォルマント補正はOFFになります。
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Range
Rangeでは、WAVES Tuneが検出するノートの範囲(音域)を指定できる機能です。
例えば、予め編集するボーカルの音域がソプラノの音域に収まっていることがわかっている場合、不要な音域のデータを拾わないように「Soprano」に設定することでより精度の高い解析が可能になります。
セグメントセクション
セグメントセクションでは、予め選択したノートに対して、音声データをノートに分割する際の条件を選択できます。
※どの範囲に効果を適用するかは後述のノートツールを使って指定します。
Root
Rootでは音声データの音階のRoot音を選択します。
Scale
Scaleでは音階のスケールを選択します。デフォルトでは12半音の平均律に設定されています。
Tolerance Note
Tolerance Note数値が小さいほどノートが細かく検出され、数値が大きいとノートが少なく大雑把な検出となります。
Tolerance Vibrato
Tolerance VibratoはデフォルトではOFFになっていますが、ONにすると音声中のビブラートを検出してビブラートの含まれるノートを分割してくれます。
補正パラメーターセクション
補正パラメーターセクションでは、「スピード」、「ノートトランジション」、「レシオ」の3つを設定します。設定はデフォルトの値を基準に、補正を早くする場合は値を下げていきます。
※どの範囲に効果を適用するかは後述のノートツールを使って指定します。
Speed
Speedでは補正速度を、0.1ms~800msの範囲でミリ秒単位で設定できます。
値を小さくすると修正速度が早くなってピッチがどんどん平坦になっていきます。
Note Transition
トランジションというのはピッチの異なる2つのノートのクロスフェード部分のことで、値が小さいほど崖のように急になり、値が大きいほど滑らかに繋がります。
つなぎ目の長さを0.1ms~800msの間で設定できます。
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Ratio
Rarioでは補正の強さを設定することができます。設定の方法は、「元の波形」と「補正後の波形」を比率で設定していきます。WET/DRYと同じようなイメージを持つとわかりやすいです。
0~100%の間で0.1%単位で設定でき、値が0だと元のオーディオ波形になり、100%にすると補正された波形のみになります。
グラフィックツールセクション
グラフィックツールセクションでは、ピッチ修正のためのツールを選択することができます。グラフィックツールは、ツイールセクションのアイコン一覧から選べる他、右クリックメニューからも選択できます。
ズームツール
ズームツールを使うと目的のノートを拡大&縮小して見やすくできます。ズームツールを使う際は便利なショートカットキーがあるのでそちらを覚えておくと作業効率が上がります。
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ちなみに拡大縮小や全体表示、画面の移動などは右下にあるボタンからも操作できます。
ナビゲーションツール
ナビゲーションツールを使うと画面を掴んで自由に移動することができます。ナビゲーションツールにもショートカットがあるので覚えておきましょう。
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ノートツール
ノートツールはデフォルトで選択されているツールで、1つのノートをクリックして選択したり、複数のノートを選択範囲で囲って選択して、選択したノートに補正を掛ける場合に使用します。
ノートツールでノートが選択された状態でカーソルキー「↑↓」を押すとピッチを動かすこともできたり、ノートのつなぎ目をクリックすることでノートの長さを変えてタイミング修正をすることも可能です。
WAVES Tuneでは基本的にはノートツールで選択したノートにのみ補正がかかるようになっています。先程紹介した「セグメントセクション」や「補正パラメータセクション」の設定についても選択されているノートのみに補正が掛かる点に注意してください。
スライスツール
スライスツールを使うと、1つのノートを複数のノートに分割することができます。ノートを分割して一部を違うピッチへ移動させる際に役立ちます。
のりツール
のりツールを選択した状態でノートをクリックすると、右隣にあるノートと結合することができます。右隣のノートの音程が異なる音程の場合、クリックしたノートの音程に合わせられて結合されます。
右隣のノートの音程が離れすぎている場合にはくっつかないので注意しましょう。ただし、複数のノートを選択した状態でのりツールでクリックすると全てのノートを1本ほノートに結合することができます。
鉛筆ツール
鉛筆ツールを使用すると、ノートを自由に描き直すことができます。大きく描き直すよりも細かい微調整に向いています。
カーブツール
カーブツールでドラッグすると選択した補正カーブ(線で表示されたピッチカーブ)を滑らかに上下に動かすことができます。
ノートツールでは半音ごとにしか動かせなかった音程をより細かく調整する際に使用します。
また、カーブツールでノートの端をドラッグすると、ノートの始まりや終わりの部分のピッチだけを上げたり下げることもできる優秀なツールです。
ラインツール
ラインツールは鉛筆ツールに似ていますが、ラインをパスで描くことでノートを上書きすることができます。ラインは点をクリックして繋いでいって、終点でダブルクリックすると描画が完了します。
UndoとRedo
左右にある矢印マークと、その下の三角形は作業をUndo(戻る)とRedo(進む)ボタンです。左側矢印が戻る、右側矢印が進むで、下の三角形からは操作履歴一覧を表示して一気に戻れるようになっています。
ピッチ編集エリア
ピッチ編集エリアではノートと、オレンジ色の線、グリーン色の線の3種類が表示されています。それぞれの意味を紹介しておきます。
ノート
ノートは、左側のピアノロールに対応していて、そのノートが平均的にどの音程に属しているか表示されています。
オレンジ線
オレンジ色の線は、補正前のオリジナルのピッチを表しています。
グリーン線
グリーン色の線は、補正後の波形を表しています。
ピアノロールのマークについて
セグメントセクションでスケールを設定すると、鍵盤にマークが現れるので紹介します。
スケール外のノートをスケール上の近い音へ移動
このマークのある鍵盤は設定したスケール外の音であることを表しています。オーディオファイルにこの音程のノートが含まれる場合、ノートはスケール上のより近い音程へ移動されます。
スケール外のノートをスケール上の高い音程へ移動
このマークのある鍵盤は設定したスケール外の音で、オーディオファイルにこの音程のノートが含まれる場合、ノートはスケール上の高い音程へ移動されます。
スケール外のノートをスケール上の低い音程へ移動
このマークのある鍵盤は設定したスケール外の音で、オーディオファイルにこの音程のノートが含まれる場合、ノートはスケール上の低い音程へ移動されます。
バイパスノート
このマークのある鍵盤は設定したスケール外の音ですが、オーディオファイルにこの音程のノートが含まていてもノートが移動されることはありません。
ただし、ノートが限りなくスケール上の音に近いと判断された場合のみ、ノートが正しいスケール上の音へ移動させられることがあります。
スクロールのON/OFF
デフォルトでは画面のスクロールがONになっていて音声の再生に合わせて画面がスクロールします。OFFにすることでスクロールしないようにできます。
ビブラートセクション
WAVES TuneではビブラートセクションをONにすることによって、音声のビブラート部分を操作することができます。
ビブラートセクションには「合成ビブラート」と「自然ビブラート」の2種類があってそれぞれにONとOFFを切り替えて使用します。
このあたりはピッチ修正の目的ではほとんど使用しない項目になるかと思いますが一応紹介しておきました。
まとめ
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WAVESのピッチ修正ソフト?と聞くとなんだかピッチ修正専門のブランドではないので微妙な印象を持つ方は多いと思いますが、その分他の数々のプラグイン開発で得たノウハウなども確実にしっかり詰まっていてきれいな編集ができるように作られています。
手軽に使えて音はトップクオリティのWAVES Tuneを是非使ってみてくださいね^-^ノ♪
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