iZotopeから発売されているNeutronとは一体何に使うの?と感じている方も多くいると思います。
ところがこのNeutronは使い方がとても簡単で、しかも知っておくだけで作業がとても楽になる、他にはない斬新な機能を備えたソフトです。
今回はそんなiZotope Neutronについて、使い方や実際に使ってみたレビューをわかりやすく紹介していきます^-^ノ
iZotope Neutronとは?
「iZotope Neutron」はCubaseなどのDAWソフトに読み込ませて使うチャンネルストリッププラグインです。
ところがただのチャンネルストリップではなく、最近話題の人工知能(AI)によって読み込んだ音に最適な設定をしてくれるだけでなく、複数のトラックを比較した際に音が濁ったりマスキング(音の被り)で聴き取りにくくなる箇所を教えてくれたり、まとめてリンクさせてバランスよく編集することもできます。
ひとことで言えば、曲全体に無駄な周波数をなくしてすべての周波数帯域を効率よくまとめるためのプラグインです💡
ですので、生音系のミックスというよりはむしろEDMなどの音圧重視、とにかく音を作り込んで住み分けが大事なジャンルで大活躍します。
チャンネルストリップとは
皆さんがスタジオで目にするミキシングコンソールはたくさんのフェーダーやツマミが並んでいますが、チャンネルストリップとは、その中の1チャンネルのみを抜き出したもので、この1列に「フィルターやEQ、コンプ、エキスパンダー」が並んでいます。
|
Neutron2になって何が変わったの?
まずはNeutronが2になって何が変わったのかポイントを押さえておきましょう💡
ユーザーインターフェイスの変更など見た目の変更もありますが、Neutron2になって初めて搭載された新機能は次の3つです。
|
新機能① トーナルバランスコントロール(Tonal Balance Control)とは?
Neutron2になって、マスタリング専用ツールであるOzone8と連携することができるようになりました。
トーナルバランスコントロールはNeutron2とOzone8を互いに連携しながら周波数全体のバランスを取るための連携ツールです。
新機能② ビジュアルミキサー(Visual Mixider)とは
ビジュアルミキサーという名前を聞くとかなりすごそうなものかと思いますが、実際は「縦軸(音量)」と「横軸(左右のパン)」を視覚的にマウスで動かせるという機能で、音の奥行きが変えられるものではありません。
ということでこれはDAWの標準機能で間に合ってしまうものだと思いました。
新機能③ ゲートエフェクトが新登場!
ある音量よりも小さな音を圧縮して無音化する「ゲートエフェクト」がNeutron2から新たに追加されました。
iZotope Neutron2はOzone8との相性が抜群!
各トラックのバランスを調整するNeutronと全体をまとめてマスタリングするためのOzoneが連携することで、お互いの行き来ができるというメリットが生まれました。
というのも、マスタリング時には使用目的に合わせてミックスからイメージを作り直すことがあるのですが、この2つの作業を連携してやることですぐにミックス段階に戻って修正を加えられるので作業時間が格段に縮まります。
ただ注意点として、連携できると言ってもミックス段階のプロジェクトに変更を加える場合には別名でプロジェクトを複製してから編集するのを忘れないことが大事です。
連携しているとついつい忘れがちになってしまうという、便利さゆえの落とし穴もあるので注意が必要です。
Neutron2とOzone8を連携して活用する方法については、主にOzone8の使い方になるので、Ozone8の使い方を紹介する際に合わせて紹介していきます。
それでは💡ここからはNeutron2になってソフトの見た目も大幅に変更が加えられたので、新たにソフトの使い方について見ていきましょう。
プリセットについて
iZotope Neutron2では近年流行りの人工知能(AI)を使った機能が豊富なので、まずはNeutronをインサートするトラックがボーカルなのか?それともどのような楽器なのか?を教えてあげる作業を行います。
楽器やボーカルの指定は「プリセット」から細かく選択することができます。
メイン画面右上にある「Presets」と書かれた箇所をクリックすると新しいウィンドウが表示されます。楽器の種類やジャンルなどが書かれているので目的に合ったものを選びましょう💡
エフェクト一覧セクションについて
画面上側には使用するエフェクトが6種類並んで表示されています。上の画像では左から「Gate」、「EQ」、「Comp1」、「Comp2」、「Exciter」、「Trangent Shaper」と並んでいて、EQが選択された状態です。
エフェクト画面の切り替え
四角い枠をクリックすると編集するエフェクトを切り替えることができます。上の画像では「コンプレッサー1」を選択してみました。
エフェクトの無効化と有効化
各エフェクトの左上にある丸い「電源マーク」をクリックするとエフェクトを無効化したり有効化することができます。
エフェクトの順番を入替える
それぞれのプラグインはマウスでクリックしたまま左右に動かすと順番を入替えることもできます。
エフェクトごとにプリセットを切り替えることもできる
各エフェクトの左下にある「三本線」のボタンをクリックすると、エフェクトごとに用意されているプリセットを選ぶこともできます。
トラックアシスタント機能
トラックアシスタント機能は、iZotope Neutronの目玉機能でもある優れた音声解析機能で、実際にソフトが音声をリスニングして最適な設定を導き出してくれるという、最近流行りの人工知能の一種が取り入れられた最先端の技術が取り入れられていますね💡
今までのプラグインのように、どの音源に対しても同じような設定を割り当てるというぶっつけのやり方ではなく、それぞれの音源の良さを十分に活かす、実際のエンジニアが耳で行っている作業を機械が代わりにやってくれる優れた機能です。
トラックアシスタント機能を使用するには画面上側「Track Assistant」ボタンを押しましょう。
トラックアシスタントの起動画面
トラックアシスタントを起動すると上のような画面が出てきます、無機質でちょっとわかりずらいですね。
Instruments(楽器)の選択
まずは、Neutronが解析する「楽器(または歌)」のタイプを指定してあげましょう。赤枠部分をクリックするとドロップダウンメニューが表示されます。
「Auto-Detect」を選択するとNeutronが適切な種類を解析してくれますが、予めわかっている時は目的の楽器をタイプを指定したほうが良いでしょう💡
Styleの選択
トラックアシスタントでは、仕上げの音色キャラクターを指定する「Style」という設定項目があります。
「Balanced」では元の音源の周波数バランスを崩さずに自然に調整処理をする設定、「Warm」では中低音域を優先した温かみや力強いサウンドに仕上げる設定、そして「Upfron」では中高音域を優先した空気感や透き通る雰囲気に仕上がります。
|
この選択で音のキャラクターがかなり変わるので、曲のイメージに合うように選択するのがポイントです💡
Intensity(キャラクター強度)の設定
先程Styleで指定したキャラクターを「どのくらい強く前面に出すか」設定する項目です。
LOWは少なめ、Highは多め、Mediumはその中間の設定になります。
|
設定が決まったら次へ
設定が決まったら「Next」ボタンを押して次の画面へ進みましょう。
演奏を再生してNeutronに音を読み込ませる
「Waiting for you to play audio…」と出てきたら、DAWソフト上で再生ボタンを押して音源をNeutronに聴かせてあげましょう。
しばらくして上のような画面が表示されたら「Accept」ボタンを押して次へ進みます。
読み込んだ音源の情報を元にNeutronが設定した画面が表示されました💡
マスキング(音の被り)帯域の表示機能
ベースの低音でキックドラムの音がよく聴こえない、というような現象をマスキングといいますが、Neutronのマスキング機能は2種類のトラックを比較して音の周波数が被っている箇所を探してくれる機能です。
Neutronの目玉機能でもあるので是非活用していきましょう💡
比較したいもうひとつのトラックにNeutronをインサートしておく
まず最初に、マスキングでは2つのトラックを比較するので、比較したいもう一つのトラックへNeutronをインサートしておきましょう。
その際、Neutronではトラックごとに名前をつけることができるので後でわかりやすいように楽器などの名前を付けておきましょう。
マスキング機能を使用して2つのトラックを比較する
マスキングでは周波数を表示するので、「EQ」のエフェクトをクリックして選択しておきましょう。マスキング機能を使用するには、EQの設定画面上部にある「Masking」ボタンを押します。
すると、比較対象先を選択できるドロップダウンメニューが現れるので、先程名前をつけた比較先を選択します。
選択ができたらDAWソフトで再生してみましょう。
再生するとこのように表示されます。ちょっとわかりずらいので重要な部分を枠で囲ってみましょう。
赤枠部分に白い部分があるのが見えますか?この部分が周波数の被りによってマスキングされている箇所です。
このままでは見づらいので少し検出の感度を上げてみましょう。
中央付近の「Sensitivity」を右にずらすとどんどん検出感度が高くなっていきます。
感度を上げると先程より見やすくなっていますね💡感度を上げたことで、上部に赤いバー(Collision Histogram)が現れました。
Collisionは衝突という意味で、つまりこのバーは2つのトラックで干渉している帯域を表しています。色が濃くて高さが高いほど干渉度が大きい周波数ということです。
これでマスキングされている周波数を簡単に見つけ出すことができました。
便利なEQのInverse Link機能!
マスキング表示機能を使って周波数の被り帯域を見つけるところまでできたので、続いてそのまま2つのトラックのEQを同時に操作できたら楽ですよね?
例えばこの例だと「ボーカルの80Hzを2dB下げ」たら「キックドラムの80Hzが自動的に2dB持ち上がる」のような機能です。
これを実現するのが「Inverse Link」という機能です。
上の画像の赤枠部分「Inverse link」のボタンを押して早速有効にしてEQを動かしてみましょう。
番号で言うと「7番」のポイントに注目してください。「ボーカルのEQを下げた分」だけ、「キックドラムのEQがリンクされて持ち上がっている」のがわかります💡
EDMなどのジャンルでキックとベースの住み分けを行うのにとても便利な機能です。
iZotope Neutron2の「Elements」、「Standard」、「Advanced」3つのパッケージの違いは?
今回使い方を紹介してきたiZotope Neutron2ですが、実は「Elements」、「Standard」、「Advanced」と3つのパッケージが販売されています。
では、これら3パッケージの違いはなんでしょうか?どれを購入するのが一番お得なのかを検証していきます。
3パッケージの比較
Neutron2 Elements | Neutron2 Standard | Neutron2 Advanced | |
---|---|---|---|
価格 | 5,128 円 | 21,168 円 | 36,720 円 |
トーナルバランスコントロール | × | × | ◎ |
バーチャルミキサー | × | ◎ | ◎ |
トラックアシスト | EQとSpectral Shaping のみ | すべての機能 | すべての機能 |
ミックスタップ (少機能版) | × | × | ◎ |
ゲート機能 | × | ◯ (単体Plug-inは無し) | ◎ |
EQ | △ (機能制限) | ◯ (単体Plug-inは無し) | ◎ |
コンプレッサー | △ (機能制限) | ◯ (単体Plug-inは無し) | ◎ |
エキサイター | △ (機能制限) | ◯ (単体Plug-inは無し) | ◎ |
トランジェントシェイパー | △ (機能制限) | ◯ (単体Plug-inは無し) | ◎ |
7.1chサラウンド | × | × | ◎ |
販売サイト | 販売サイト | 販売サイト | 販売サイト |
Elementsは機能が少ないので候補から外したほうが良い
まず最初にElementsですが、こちらはまず一般的によく使うEQ、コンプレッサーからエキサイター、トランジェントシェイパーまですべてに機能制限があります。
これらの機能制限に伴って、トラックアシスト機能でも最大のパフォーマンスは当然発揮できない構造になっています。
価格は5,128円ととてもお手頃価格ですが、Elements版を購入してもできることがほとんどないので購入はあまりおすすめできません。
Ozone8と連携しないならStandard版でもOK
主にトラックアシストを利用したい方はNeutron2 Standard版を購入すれば全く不自由なく作業を行うことができます。
現状の感想は、ミックスタップ(Neutronの右側のフェーダー部分のみの軽量プラグイン)やEQやコンプ単体としてNeutronを使うことは無いので、これらが含まれていないStandad版でも全く問題は無いと思いました。
ただし強力なOzone8との連携ツール「トーナルバランスコントロール」が含まれていないのでOzone8と連携したい方はStandard版では実現できません。
Ozone8と連携するならAdvancedを購入するしかない!
Ozone8と連携するための「トーナルバランスコントロール」はAdvanced版にしか含まれていないので、Ozone8と連携したい場合はAdvancedを購入するしかありません。
iZotope Neutron2のまとめ
|
ミックスが苦手という方は多いと思いますが、Neutron2があればミックスの敷居も低くなっていくかもしれません。
特にエンジニア専門ではなく、EDMなどの曲を作ることが好きでどんどん作品を仕上げていきたいという方にとっては素晴らしいパートナーになること間違いなしです^-^b
まだ使ったことがないという方は是非一度試してみてくださいね💡