作曲をするには、曲をどのような構成で作るのかがとても大切です。そして、曲の構成を知るためには、まずは曲の主題(テーマ)とは何かを知る必要があります。
今回は、曲の主題ってなに?という話から、主題が1つだけの曲、2つの曲、サンドイッチになっている曲や、さらにはマーチ形式やソナタ形式、ロンド形式まで、これを読めば曲の構成のすべてがわかります^-^ノ
曲の主題(テーマ)とは?1つの物語のこと!
曲の主題とはいわば一つの物語のことです。1つの主題には起承転結があって、その中で1つの物語が完結しなければいけません。
例えば次の例を見てみましょう💡
童謡「春が来た」
童謡「春が来た」は8小節からなる1つの主題を持っています。歌詞を見ても1つの物語が完結できるだけの十分な情報量がこの8小節には含まれていることがわかりますね💡
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主題はフレーズ(楽句)を組み合わせて構成されている
主題をさらに細かくすると、フレーズが組み合わさって作られているのがわかります。
フレーズとは
フレーズとは一息で歌いきれる程度の長さのまとまりのことで、主題の前半部分「起承」と後半部分「転結」を担当します。
4/4拍子では、テンポにもよりますが、4小節程度のフレーズなら一息で歌いきることができますね💡
息継ぎのポイントも、このフレーズの終わりを意識するとわかりやすくなります。
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フレーズについてもっと知りたい方は「楽式論② 楽句(フレーズ)の作り方」をご覧ください。
フレーズは2つのモチーフから構成されている
さて、少しややこしくなってきました。先程のフレーズですが、実はさらに2つに分けることができます。
この分けたものが、曲を構成する最小単位「モチーフ」です。
モチーフとは
モチーフとは、「拍子」、「リズム」、「音程」の3つの要素からなる、曲の主題のイメージを決める、最小単位のことです。
モチーフは曲のはじめに独特の音型で印象的に現れて、後の全ての音形に含まれて反復されて現れます。
つまり最初に決めてしまったモチーフは、曲の終わりまでずっと印象を引っ張る要素になるのでこれを決めるのはとても重要な作業だということです。
モチーフの3大特徴
モチーフには、「リズム的特徴」、「音程的特徴」、「音形的特徴」という3つの大きな特徴があります。
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モチーフについてもっと知りたい方は「音楽の構成-楽式論① モチーフについてもをご覧ください。
主題が1つだけ!? もっともシンプルな「1部形式」
先ほど紹介した童謡「春が来た」のように、主題を1つしか持たない曲のことを「1部形式」と呼びます。
童謡や民謡など、短くて覚えやすい親しみやすい曲には、このシンプルな1部形式で構成されている曲がたくさんあります。
1部形式は何といっても同じメロディが8小節(曲により)ごとに繰り返されるので耳に残りやすいという強みがあります。
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主題が2種類の「2部形式」とは?
1つの曲中に2つの異なる主題が登場する形式を2部形式と呼びます。
1つめの「第一主題」が終わるところまでは1部形式と何も変わりません。ところが、2つめの主題「第二主題」が始まるとともに今まで登場しなかった新たなフレーズが提示されます。
第二主題の後半は2つのタイプが存在する
第二種題の前半では新たなフレーズが登場すると説明しましたが、後半はどうでしょう?
実は主題2の後半では、第一主題の後半部分(フレーズa)が再現されて登場する場合と、第二主題の前半部分(フレーズb)を使って終止する場合の2パターンで曲を作ることができます。
それぞれのタイプを比べてみましょう💡
パターン1【a a’ b b’】タイプ 「グリーンスリーブス」
まずは、「第二主題」の後半が第二主題前半のフレーズを使って構成されている「a a’ b b’」タイプを見てみましょう。
パターン2【a a’ b a’】タイプ 「花」
今度は「第二主題の後半部分」が第一主題のフレーズを使って作られているパターンです。
よく見ると先程のパターンと比べ、全体でより統一感が生まれているのがわかりますね💡
B’部分で一瞬違う世界観のフレーズが現れてはっとさせておいて、すぐにまた同じ世界に戻ってきて統一感を生み出すというのは、2部形式で使う常套手段になっています。
といっても、基本は同じモチーフを使って展開させているのでそこまでまるっきり異なる世界観にはならない点にも注意しましょう。
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種類が同じでも交互に登場すれば「3部形式」!?
3部形式は、音楽形式の中でも最も多く使われている形式です。
ところでみなさん、上の図を見てお気づきでしょうか?そうです、第一主題と第三主題をよく見ると同じものですよね?
このように、「第一主題→第二主題→第一主題の再現」のように、異なる主題を挟んでサンドイッチのように3つの主題が並んだ形式を3部形式と呼びます。
第一主題は、そのまま再現される場合もあれば、少し変形されて再現されることもあります。
もちろん3つの主題がすべて異なる「第一主題→第二主題→第三主題」のようなタイプも3部形式と呼びます。
3部形式の例「七つの子」
第一主題、第二主題が終わると「D.C.(ダ・カーポ「曲頭に戻る」)」によって、再度第一主題の頭に戻っていますね💡
また第一主題の終わり複縦線部分にはFine(フィーネ「曲の終止」)があるので、ここで演奏は終了で、「第一主題→第二主題→第一主題の再現」というきれいな3部形式になっています。
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もっと複雑な「複合3部形式」ってなに?
これまでに、1部形式、2部形式、3部形式の曲を学んできましたが、実はこれらの形式をさらに組み合わせて複雑に並べることもできるのです。
例えば「3部形式を3つ並べたもの」、「2部形式を3つ並べたもの」、「2部形式の間に1部形式を挟んだもの」など、これらすべてを複合3部形式と呼びます。
実は有名なソナタ形式、ロンド形式、マーチ形式なども複合3部形式の一種なのです。
複合3部形式の組み合わせ例を見てみましょう。
各部が3部形式で構成されたもの
各部が2部形式で構成されたもの
2部形式の間に1部形式が挟まれたもの(マーチ形式など)
3部形式の間に1部形式が挟まれたもの(大ロンド形式など)
3部形式-1部形式-1部形式が並んだ形(小ロンド形式)
少しややこしいですが、大ロンド形式を縮小したものなのでこのように解釈します。
2部形式の間に3部形式が挟まれた形
3部形式の間に2部形式が挟まれた形
3部形式-3部形式-2部形式の形
などなど、まだまだたくさんのパターンと解釈を発見することができそうです💡
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マーチ形式
近年の吹奏楽コンクールで演奏される4拍子系のマーチは「第一主題」、「第二主題」、「第三種題(Trio)」の3部形式で構成されるものが多いですが、マーチの起源はTrioが終わるとD.Cで主部(第一主題&第二主題)が再現される複合3部形式として誕生したのです。
さらに、マーチは人が2足歩行で歩くためのものだったので、古くは2拍子系で作られるのが一般的でした。
マーチは中間部(Trio:トリオ)が大切
マーチが複合3部形式で作られた時代、今よりも限られた性能の楽器で音楽に表情を付けなければならなかったので、中間部では楽器を減らして、さらに下属調(4度上の調)へ転調することで曲に変化をつけるという習慣が生まれました。
Trioこそマーチを特徴づけるものだったので、D.C.が省略された現代のマーチでも3つめの主題をTrioと読んで当時の性質を残す習慣になっています。
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ソナタ形式
曲の形式と聞いて誰もが頭に思い浮かべるのがこのソナタ形式ではないでしょうか? 多くの形式の中でも最も華麗に構成されているといっても過言でないほどに美しい形式です。
ソナタ形式は複合3部形式で構成されている
ソナタ形式は、「提示部」、「展開部」、「再現部」という3つの部分からなる複合3部形式を基本とした構造になっています。作品によっては序奏部や終結部があったりなかったりします。
「自由な展開部」と「ルールが決まっている提示部、再現部」
ソナタ形式には厳格にルールが決まっている箇所と、作曲者が自由に作って良い箇所があります。
複合3部形式のトリオに当たる展開部は、第一主題や第二主題のモチーフを使って自由に展開させることができるので、作曲家のセンスや個性が強く現れる箇所でもあります。
一方で「提示部、再現部」は主調が長調か短調かによっても構造が変わってくるという点をしっかりと押さえておかなければなりません。
主調が長調のとき
序奏部 | 提示部 | 展開部 | 再現部 | コーダ(終結部) | ||
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序奏 | 第一主題 | 第二主題 | 主題を展開 | 第一主題 | 第二主題 | 終結部 |
主調 | 属調 | 自由な調 | 主調 |
提示部
主調が長調のときは、第一主題までは主調、第二種題からは属調へ転調します。
再現部
第一主題は提示部とほぼ同じ形で再現されますが、第二主題は主調に転調して再現されます。
主調が短調のとき
序奏部 | 提示部 | 展開部 | 再現部 | コーダ(終結部) | ||
---|---|---|---|---|---|---|
序奏 | 第一主題 | 第二主題 | 主題を展開 | 第一主題 | 第二主題 | 終結部 |
主調 | 平行調 | 自由な調 | 主調 | 主調・(同主調) | 主調 |
提示部
主調が短調の場合、第一主題までは主調、第二主題からは平行調へ転調します。
再現部
こちらも第一主題は提示部とほぼ同じ形で再現され、第二主題も主調に転調して再現されるという点は同じです。
ところが「主調が短調の時」、第二主題は同主調として再現されることもあるので覚えておきましょう。
「ソナタ」と「ソナタ形式」は別物なので要注意!
「ソナタ形式」と「ソナタ」はよく混同されがちですが、ソナタとは3~4楽章で構成された、そのうちの1つ以上にソナタ形式の楽章を含んだ器楽曲のことです(ソナタにはもともと器楽曲の意味がありました)。
実際にはもっと多い楽章や少ない楽章で構成されたソナタも存在します。
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ソナタの構成
ソナタで構成された曲には、交響曲と弦楽四重奏、ピアノソナタなどがありますが、それらは概ね次のような3~4楽章からなる構成で組み立てられています。
第一楽章 | 第二楽章 | 第三楽章(略可) | 第四楽章 | |
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形式 | ソナタ形式 | ・ソナタ形式 ・三部形式 ・変奏曲など | ・メヌエット | ・ソナタ形式 ・ロンド形式 ・(変奏曲) |
曲調 | 速い演奏(Allegro) | 情緒的で緩やかな演奏 | 三拍子系の舞曲 | 速い演奏 |
※ソナタは全ての楽章が揃って1曲という扱いになります。
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ロンド形式
ロンド形式とは、簡単に言えばとにかく同じ主題が交互に何度も登場する形式のことで、今では「大ロンド形式」と、それを縮小した「小ロンド形式」の2つが一般的です。
第一主題が交互に何度も繰り返される複合3部形式
主部 | 中間部 | 主部 | |||||
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大ロンド形式 | A | B | A | C | A | B | A |
小ロンド形式 | A | B | A | C | A |
上の表を見るとわかりますが、「第一主題(A)」が何度も繰り返され、その間に他の主題が入り込んで曲がつながっていくというスタイルです。
皆さんご存じの有名な「エリーザのために」もこのロンド形式で書かれた曲です。
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曲の形式を理解する-楽式論のまとめ
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皆さんが普段聞いている曲はすべて、今回紹介したような曲の形式を使って分析することができます。
自分で作曲をする際に形式を意識するだけではなく、普段聞いている曲や好みの曲がどのような形式で構成されているのかを調べることも、曲を分析する上で大きな力になるでしょう💡
また今回紹介したように、曲の形式の中にはその曲を構成する上でとても大切な箇所があるので、曲を編曲する際や組み立てる時に、そのポイントを外してしまわないためにも形式の知識が必要になることもあります💡
今までメロディをどうやって組み立てていけば良いかわからずなんとなく感覚で作っていた方や、曲をどのように構成していけばよいか途中でわからなくなってしまっている方は是非曲の形式を意識しながらメロディを組み立ててみてください^-^ノ